アトラ・ハシス

第二回リアクション

『心の悲鳴』

川岸満里亜

 頑丈な家もない
 綺麗な服もない
 
 暖かなコートはここにはなくて
 温かなミルクも手に入らない

 なくてもいいよ
 何もなくてもいいよ

 唯一つだけ
 だから、ただ一つだけ欲しいものがある

 過去に帰らなければ、取り戻せないもの
 言葉に表わせない、確かにあった、そのものを

 お願い、誰か…………

*        *        *

 風が痛いほど冷たかった。眠ってしまえば、二度と目覚めることがないような。そんな危機感を覚えた。
 マール・ティアウォーターはそれでも、寮に入ろうとはしなかった。
 手を焼きながらも、大人たちが彼女を強制的に寮に入れようとしないのには、訳があった。
 大人たちは皆、彼女をどう扱ったらいいのか、分からないのだ。だから、彼女から目を逸らす。
 でも、彼女を自分達の子供の一人として、大切に想う気持ちも、持っていた。
 その日。出かけようとしたマールの元に、一人の男性が訪れた。
 彼の名はタウラス・ルワール。先住民との交渉をやっている人物だ。村の長の補佐も始めたらしい。村の長……現在、村を纏めているレイニ・アルザラという女性は、マールにとって、最大の敵であった。マールの話を頭ごなしに否定したあの態度は、子供を軽んじているとしか思えない。許せない人物なのだ。
 だけれど、このタウラスという人物は違う。彼が補佐に就く以前から、マールは彼を知っていた。
 タウラスは、テント暮らしのマールに引越しを勧めに来たのだった。自分の家で住み込みで働かないか、と。
「交渉や公務で部屋を空けがちですから、マール殿の自由な時間もしっかりと持っていただけるはずです。そうですね……まずは、冬の間だけでも助けてはいただけませんか?」
 優しく穏やかに言う彼の様子に、彼に対するマールの心がまた少し、解けていく。
 タウラスは……良い人だとは思うけど……。大人に雇われるのは……。
 考えるマールを、優しい瞳で見つめ、タウラスは彼女の返事を待っている。
 マールは伏目がちに、今出かけようとしていた理由から話し出す。
「わたしも今、おじさんにお願いをしに行こうと思ってたの……。怪しい人がいるの。昔、同じような目をした人に私……」
 ぽつり、ぽつりと過去のことを話し出す。
 触れられたく過去。誰にも知られたくない過去。
 だけれど、信じてもらうためには、言わねばならない。
 自分が、あの男のような人物に、弄ばれてしまった過去、を……。
 タウラスは黙って彼女の話を聞いていた。
「だから、ここでも、そういう事が起こらないように、警備をしなきゃいけないと思うの。わたしが言っても大人は動いてくれないから。おじ……タウラスから言って欲しいの! そしたら、私、タウラスのお家の仕事、引き受ける」
 聞き終えると、胸に染み入るような声で、タウラスは「わかりました」と言った。出来ることから始めてみます。と。
「皆さんあまり一人では行動しないように呼びかけてみましょう。マール殿も、できるだけ一人にならないようにしてくださいね?」
 自分の事を気遣ってくれるその言葉が、マールの心を温めた。
「あ、後ね。おばあさん達に決まった子供達を面倒見てくれる様にならないかな? そうなれば……少しは安全だと思うんだけど」
 マールの言葉にタウラスはしばし考える。マールの提案は、レイニなら、即座に「無理!」と言いそうな発言であった。
 老人一人で船に乗った人物は、殆どいない。家族に連れられて、もしくは孫を連れて乗り込んだ人が殆どだろう。家族と引き離して子供を引き取らせることは難しく、孫の面倒を見ている老人にさらに子供を看させるわけにもいかない。
 また、どれだけの子供達がそれを望むか。寮で他の子達と暮すより、縁のない大人と二人で暮らすことを。
 レイニが話していたように、引き取れる大人は全て子供を引き取っていると思われる。自分の生活が侭ならないため、あえて寮に子供を預けている大人も多い。決して愛していないわけではないけれど、生活が安定するまでは、どうにもならないことなのだ。まずは、皆が安定して暮していける基盤が必要だ。村の運営に関しては、レイニを暫定で長とし、先日ようやく始まったばかりだった。老婆に子供を引きらせたのなら、援助が必要になる。その援助となるお金を何処から出すのか。運営費捻出に関しても、これから決めるところだ。
 まずは、公務に携わっている自分達が頑張ればならない。そう固く思いながら、タウラスは、マールの真剣な眼差しに誠意をもって答えた。
「そうですね。大人と暮せば、危険は減るでしょう。皆様の生活を調べて、もう少し詰めてから会議で提案してはどうでしょう? 纏めるのに不安でしたら、私もお手伝いしますから」
 否定をせず、自らの意見を自分で纏め上げて提示できるよう、タウラスはマールを促した。
「うんっ」
 ああ、この人はちゃんと話を聞いてくれる。
 マールの顔に自然に笑みが浮かぶ。
「わたし、運動が凄く出来る人、知ってる。警備隊に入ってくれるように、お願いしてみるね」
「マール殿が交渉……ですか? あまり無理はなさらないでくださいね」
 タウラスは、マールの交渉相手が誰であるのか、大体察しがついた。無理はさせたくないと思いながらも、彼女が自分で動こうとしている、その気持ちを無碍にはしたくなかった。タウラスはマールを止めることはせず、彼女を気をつけて見ていようと心の中で、決めるに留めた。

 タウラス・ルワールは多忙だ。自ら会議で名乗り出た先住民との交渉役の他、レイニ・アルザラの補佐まで務めているのだから、無理もない。休む暇もないほどの指示が、レイニからタウラスに届く。しかし、当のレイニもタウラス以上の職務を抱えているのだから、仕方がないのだが……。
 タウラスが次に向かったのは、シオン・ポウロウニアの元だ。
 先日、健康診断が行われ、同時に難民達の住民登録も為された。しかし、村の外れで暮す、一人の男に対してだけは、それは行われなかったのだ。稀に村に現れるその男を、見知ってはいたが、正確な住処までは分からない。そこで、その男性によく付き纏っているシオンに、案内してもらおうというのだ。
 シオンは快諾し、二人で村外れの男、シャオ・フェイティンの元に向かった。……その途中。シャオの住処に着く前に、二人は目当ての人物に遭遇することになる。
「兄ちゃん!」
 走り寄るシオンと、会釈をするタウラスを無表情で見るシャオ。
「……シオン、来い」
 短くそう言い、シャオは森の奥へ歩く。
「へー、にーちゃんが、ついて来いなんて言うの、珍しいな」
 興味津々でシャオに続くシオン。タウラスも後に続く。
 しかし、シャオに誘われ、導かれた先には、目を見張る光景があった。
 タウラスはそれを見ると、即座に駆けつけ、声をかける。
「大丈夫ですか……っ」
 それは、倒れた壮年の男性だった。胸にこびりついた血が生々しい。男性が小さな声をあげる。
「一体誰が……」
 シャオを見上げるタウラス。
「止血はした。犯人は知らん」
 シャオはそう言い、シオンに向き直る。そして、シオンと交渉をする。シオンが見つけたことにしろ、と。深く理由までは語らない。シャオが村に連れて行くより、シオンが発見したとした方が、余計な問題まで起こさずに、事が運ぶであろうことはシオンにも分かった。
「あなたではない証拠は?」
 タウラスがシャオに問う。疑いたくはないが、聞かねばならないことである。
「襲う理由がない。理由があるなら、生かしておく理由がない」
 彼という人物からして、それは尤もだ。
 タウラスは男性に声をかけながら、担ぎ上げる。
 シャオは発見当時の子細をシオンに話し、二人の間で口裏あわせが為される。
 シオンが発見し、タウラスに知らせたという流れが出来上がった。
「少々相談がありますので、また後ほどうかがいます。ああ、余計な事は言いませんので、ご安心ください」
 そういい残し、タウラスはシオンと共に、男性を運び、村唯一の医者、オリン・ギフトの元へ急いだ。

 男性は直ぐに手術室に運ばれ、オリンにより、胸の傷の消毒、縫合が行われる。その男性は、機関士……現在は、大工仕事の現場責任者をしている人物だ。数少ない働き盛りの男性の突然の怪我に、村人は動揺した。
 報告を受けた現在の村の長レイニ・アルザラが駆けつける。オリンから容態を聞き、命に別状はないことを知ると、混乱を防ぐため、タウラスに機関士の家族と村人に「作業中の事故らしい、命に別状はない」と伝えるよう命じた。
 皆、その言葉を信じた。誰も、それは事故だとしか思わなかった。他人を刺すほどの争いは女性ばかりのこの村では起きていないのだから。
 レイニと、戻ったタウラスはオリンから男性の症状を聞く。
 鋭い刃物で胸を貫かれ、全治1ヶ月というところらしい。出血は酷いが、傷口は深くはなく、急所も外れているとの事。発見が遅ければ出血多量で死亡していたという言葉を聞き、タウラスはシャオが知らせてくれたことに、内心感謝するのであった。
 数日中に、意識も戻るだろうとのことで、オリンは男性の看病をイリーに任せ、自分は他の患者の診察に戻る。レイニとタウラスは一旦執務室に戻ることにする。
「明らかに、事故や、自分でやった傷じゃないわね。村の誰かがやったとはとても考えられない。でも、先住民に襲われる謂れもない。分からないわ……とにかく、意識が回復してから本人に聞くしかないわね……」
「フッツ殿に村の見回りをしていただいていますが、早急に警備隊が必要なようですね」
「警備隊……欲しいんだけど、指揮はあなたがやるとしても、隊を率いる人物がねぇ……老人や女子供にやらせるわけにもいかないし」
「シャオ殿なら、適任だと思うのですが」
 マールが動いてはいるが、タウラス自身もシャオに交渉するつもりであった。
「シャオ? あ、村外れの男性ね……彼が警備ねぇ……警備員というのは、強さだけじゃなくて、それなりの信頼ってものが必要よ。彼は警備員というより、むしろ犯罪者に見える」
 この人は、相変わらずはっきり物事を言うなぁと、タウラスは苦笑するのだった。
「村の警備員というよりは、護衛とかの方が合ってるんじゃない? シャオに護衛を頼み、フッツを護衛からはずして、警備隊に回す、とか……」
 そこまで言った後、レイニは突如口を閉じ、深く考え込み始める。
 しばらくして、
「……まあ、どのみち、警務の一環ね」
 と会話を終わらせたのだった。
「そういえば、レイニ殿。先日執務室に現れた、ホラロ・エラリデンという方……あまり気持ちの良い印象の方ではありませんでした。気になります。今回の件もありますし、念の為、先住民の族長にも警戒するよう、伝えるべきかもしれません」
 ホラロ・エラリデン。
 先日、村に現れた毛深い男性だ。遭遇したマール達が嫌悪する人物。薄汚れていたが、その服装は大陸で一般的なものであり、言葉も訛ってはいなかった。船に乗船していなかった彼を、タウラスは警戒していた。
 タウラスの言葉に、レイニは不思議そうな顔をした。
「ホラロの事を?」
「誤解を招かぬよう、村とは無関係であると示唆すべきだと思います。自分達も警戒すべきと考えている相手だと伝えてもよろしいですね?」
「……ちょっと待って。何でそういう話になるのか、理解できないんだけど」
 執務室に入り、二人はソファーに向かい合って腰掛ける。
 タウラスは、レイニに、子供達がホラロと遭遇し、奇妙な目で見られていることを話す。また、自分自身も彼から危険な雰囲気を感じると。
「タウラス。あなた、外見で人を判断する人だっけ? 一見して「気持ち悪い寄るな!」と言うのは私で、「外見で人を判断するものではありませんよ、レイニ殿」なーんて、嗜めるのが、あなたのポジションじゃなかったっけ」
 レイニが苦笑しながら言う。タウラスも思わず苦笑いする。
「先日、彼は、レイニ殿にどのような相談をされたのですか?」
 先日、役場棟の執務室にホラロが訪れたのは知っている。しかし、彼とレイニとの間で交わされた会話の内容までは、タウラスは知らなかった。
「この村で暮したいってだけよ」
「……それだけですか?」
「自分の知識はこの村で役に立つから、この村の住民にしてほしいって相談。それだけよ。簡単に言えばね……」
 話した後、レイニの顔が曇る。
 言葉に嘘はないようだ。しかし、彼女の表情が、彼との会話に、その相談だけではない何らかの密談があったことを物語っていた。
「まあ、あなたには詳しく話すわ。……もっと落ち着いて会話できる時に」
 それだけ言うと、レイニは職務に戻る。
 その先の話が気になりはしたが、今聞いても無駄のようだ。タウラスも仕事に戻ることにする。

 タウラス・ルワールのその後の交渉により、シャオ・フェイティンは、住民登録に応じた。機関士の件においてのタウラスの対応が功を奏したらしい。回復後の状況提供に関して、タウラスはシャオの要求に応じる約束をした。ただし、警備隊の結成に関してはシャオはきっぱりと断った。マール・ティアウォーターからも、彼に打診がいったのだが、それもにべもなく断ったのだった。
 夕方、シャオは、オリン・ギフトの診療室を訪れる。
 オリンの前で上半身の着衣を脱いだ彼の背には、凄惨な傷跡があった。鞭傷だと、オリンは気付く。しかし、何も言わず、診断を続ける。
 その様子を確認し、シャオは口を開く。
「応急手当の仕方を教えてほしい。生傷が絶えんのでな」
 それとなく、問診の合間に質問を入れる。そして、話には例の話に進む。
「機関士が運び込まれたそうだな。容態は?」
「意識は戻らないが、容態は安定している。命にも別状はない。全治1月ってところだな」
 タウラスから聞いた話と一致している。
 シャオは試していた。タウラスが、オリンが信用に値する人物かどうかを。
 診断を終えると、着衣をまとい、背を向ける。
「月が登ったら、一人で森の入り口へ来い」
 そう言葉を残して去っていった。

 シャオ・フェイティンが自らの根城に戻ると、そこには、マール・ティアウォーターの姿があった。
「おじさん! お願い、警備隊やってっ」
 シャオの姿を見つけると、マールは必死に訴えてきた。
「だだじゃダメだっていうなら、私の持っているもので、欲しいものがあったら、おじさんにあげるから」
 不要。とシャオは一言だけ紡ぐ。
「わ、私なんでもするから! お願いっ」
 マールは、シャオが頷いてくれるまで、頑として動かないつもりだった。実に村でシャオを見つけて追いかけ、その後数時間飲まず、食わずでねばっている状態だ。
 どうしても、あの卑下な目をした毛深い男が気になるのだ。放っておいたら、絶対、村に……村の子供達に危害を加えるはずだ、と。
「何でも。か」
「……うん、何でもするよ……」
 あまり好きな子はいないけれど……でも、小さな子にわたしのような目にあわせたくない……絶対守らなきゃ。
 その強い思いがマールを動かしていた。
 ならば、と、シャオはここに住み込むよう、マールに言う。マールをカモフラージュに使おうというのだ。ここにいる、あの男の存在を隠し通すための。
「それは……タウラスに聞かなきゃお返事できない」
 マールは先にタウラスと雇用契約を結んでいた。既にタウラスの手配で、彼の家に、マールの荷物全てが運び込まれている。明日には、約束どおり、タウラスの家で働かなければならない。
「話にならんな」
 マールを押しのけ、シャオは根城……カモフラージュされた洞窟へと足を運ぶ。
「待って!」
 シャオを掴んで止めようとしたマールだが……。
「あ、れ……?」
 何故か、目が回る。力が入らない……。
 途端。マールの意識は消し飛んだのだった。

 目を覚ました時には、ベッドの上にいた。
 ベッドの上なんて、何日ぶりだろう……。
 ぼーっとそんな事を考えてる自分がいる。
「あ、気付いた?」
 優しそうな女の人が傍にいた。確か、イリーという名だ。子供達の世話をしている人。
「ここは?」
 マールは身体を起こした。自分は洞窟の前にいたはずだ。
「タウラスさんの部屋よ。長い髪の男の人……シャオさんだっけ? 彼が村の入り口まで運んでくれたのよ。森に入ったらダメじゃない」
 ただの、軽い栄養失調だから、食事をとって、ゆっくり休みなさい。そう暖かい声で言い、イリーは部屋から出て行った。
 ベッドの脇に、魚の干物や果物がある。テントの前においてあったものだ。
 誰がくれたのか、分からない。
 大人じゃ、ないよね。
 シオンかな……アルファードかもしれない。
 お腹が空いている。喉もからからだ。
 感謝をしながら、マールは果物を手に取った。

 月夜。
 シャオ・フェイティンはオリン・ギフトを洞窟へと誘う。
 洞窟内に設けられた一室。鍵で閉ざされたその中に、あの人物が寝かされていた。
 機関士を刺したと思われる……仮面の男。
 オリンに習った処置を施してあり、男の生命は辛うじてつながれていた。
 オリンは即座に男の怪我を確認する。
 刃物で裂かれたような切り傷が無数に存在している。
「ナイフか……いや、刃物にしては綺麗すぎる傷だ」
 いくつかの傷は深く、出血も激しかったようだ。治りかけた様子があることから、最近ついたものではないだろう。少なくとも数週間は経っているように見える。適切な治療をせず、動きまわった為に、傷口が広がったのだろう。
「無数の切り傷に打撲が数箇所か。切り傷の方は問題ない。手術をせずとも、薬で傷を塞ぎ、回復を促せばいいだろう。安静が第一だ」
 風刀か。
 オリンは傷の正体に目星をつける。風の戦術魔法だ。大陸で、何度か診たことがある。
 この傷は、風の刃を飛ばすタイプよりも、風を纏った手刀や、風剣。所謂接近戦でついた傷と思われる。急所は外してあるのか、外したのかは分からないが、臓器は傷ついていないようだ。そのように、シャオに説明をする。
「酷いのは、腹部の打撲か。この打撲で肋が3,4本折れているようだ」
「…………」
 手加減をする余裕がなかったのだから、仕方がない。いや、余裕があっても、したかどうか。
 仮面の隙間から血の跡が見える。オリンは迷うことなく、仮面を剥がす。
 中性的な顔立ち……薄汚れているが、血を洗い落とし、髪を梳いたのなら、絶世と思われるほど端麗であった。
 顔の血を拭き、傷の確認を終える。
 ふと、男の腰に短刀が挿してあることに気付く。機関士を刺したものだろうかと、オリンがそれに触れようとした瞬間。
「っ……」
 男が目を覚まし、オリンの手を掴み、払った。
 男の目は、どこか虚ろであった。
「遺言があるなら、言っておけ」
 朦朧としている男に対し、シャオが言葉を投げる。
「お前たちなどに俺の思いを伝えても仕方ない――こんなところで俺は朽ち果てない」
 男はそう小さく呟くと、再び意識を失った。
 オリンは、手当てを終え、薬を残し洞窟を後にする。
 月の光がどこか鋭く感じられた。
「医者として救える命を救う」
 それがオリンの姿勢であった。詮索するつもりは、ない。

*        *        *

 最近、夕方になると、マール・ティアウォーターと、シオン・ポウロウニアは、二人でとある人物を尾行している。どうしても、あの男が気になるマールに、シオンが付き添っている状態だ。
「姉ちゃんは、おれが守るよ」
「ありがとう、シオン。わたし、学園には近寄りたくない……というか、中の事はわからないから、そっちのことはシオンに任せるけど、でもね、危ないことは絶対しちゃだめなのよ、ネ?」
「わかってるって!」
 二人が尾行している人物……ホラロ・エラリデンは日中、寮の庭……運動場として使われている場所のベンチに腰かけ、生徒達をぼーっと眺めていることが多い。時に、にやけた笑みを浮かべるのが非常に気持ち悪い。
 今は、役場内にいる。レイニにでも面会しているのだろうか。
 ホラロが出てくるのを待ちながら、マールはシオンに学園内のことを訊ねる。
 シオンは、マールの頼みに弱い。近頃薄々気付き出した、学園での苛めの事について、話す。
 じきに、役場からホラロが出てくる。二人は再び彼の後をつけた。どうやら、このまま自分に与えられた部屋に戻るようだ。毎日同じ行動の繰り返し。特に怪しい行動もなく、何も情報はつかめなかった。

*        *        *

 学園では、連日熱心な授業が行われている。
 シオン・ポウロウニアも、ルルナ・ケイジを連れ、毎日授業を受けるようになった。
 本日は村の住民、橘・花梨の申し出もあり、「鉄」に関しての講義であった。子供達と一緒に、授業に参加している花梨の姿がある。
 オリン・ギフトにより、大陸での、鉄の歴史、精製の仕方について、述べられる。
「鉄を作るのにも、石炭が必要なの? 鉄鉱石も、石炭も土の中に埋ってるんだよね? 地の魔法で発見できないのかな〜」
「それ相応の地の魔力の持ち主なら、探れるかもしれないな。石炭はともかく、鉄はこの島での採掘は難しいだろう」
 子供の素朴な疑問に、丁寧に答えるオリン。そんな様子を見て、花梨はオリンに尊敬の念を抱くのだった。
「鋳鉄っていうのは、硬くてもろいんだぜ」
「ええっと、鋼は硬くて強いんだ」
 授業が続き、シオンと学級委員のバリが、競うように発言をしている。
 最近、この二人は何かと張り合っているように見える。張り合うといっても、敵対ではなく、共に向上しあう、良い関係が築かれつつあった。
 ……そんなふうに、認め合っていく二人を、ルルナ・ケイジはただ、黙って見ていた。
 学校が終わると、シオンはマールとどこかに行ってしまう。
 マールは、どこかルルナを避けるようであった。
 二人が仲が良くて、恋人同士であっても、いいけれど……。
 バリ君とシオンが親友になってもいいけれど……。
 でも……。
 ルルナの視線が外へと移る。
 外を見た。
 何かを、探して。

 ずっと……遠くを……。

*        *        *

 定期会議が開催される。
 レイニ・アルザラが一人の男性を連れて会議室に現れる。ホラロ・エラリデン……タウラスやマール達が注視している男だ。
「既に見かけたことのある人もいると思うけど、彼の名はホラロ・エラリデン。大陸では魔法学者だった人よ。洪水時、運よくこの島を探索していて、助かったんだって。彼の魔法知識は役立つでしょうし、行くところもないみたいだから、この村の一員として迎えようと思うの」
 レイニに促され、ホラロが挨拶をする。
「文化人の私としては、この島の先住民のような下賎な民族には、関わるのもおぞましく困ってましてねぇ。あなた方を見つけた時には、ホント神の助けと思いましたよ。私もここの一員として精を尽くしますので、宜しくお願いしますね〜」
 にやけた笑いを見せるホラロ。決して気持ちの良いものではなく、村人の反応も、歓迎ムードからは程遠い。それでも、大陸の、まして魔法に精通していた人物の参入は心強い。ホラロは拍手で迎え入れられた。
 次に、レイニの指示で、オリン・ギフトから、機関士の負傷について語られる。
 意識が回復した機関士から少しだけ聞けた話によると、仮面を被った黒装束の人物に突然刺されたということだ。
 体格からして、相手は男性だろう。傷口の状態から、機関士と同じくらいの身長と思われる。この村には成人男性が数えるほどしかいない。その誰でもなかったと、機関士は語ったという。
「……先住民ってことかしら」
「そういうことに……なるのかもしれないわね」
 議長を務めているレイニが曖昧に答える。
 会議室に沈黙が流れる。
「とりあえず、単独での外出は控えること。特に、森には少人数で入ったりしないように」
 機関士の怪我がもう少し回復したら、彼から更に詳しい話を聞き、対策を練るということで、話は次へと進められる。
 続いて、交渉責任者タウラス・ルワールから、先住民との接触結果が伝えられる。
 友好的という程ではなかったが、ここで暮すということに、構わないという返事をいただけたということ。
 冬の対策に対して、教授していただけた事に関して。
 伐採に関して警告を受けたこと。無理な採取や伐採は控えるよう、タウラスは皆に告げる。
 拒否されなかったことに関しては、ひとまず安心だ。しかし、機関士が難民ではないと思われる人物に襲われたことで、皆の顔は一様に厳しい。
「雪深くなる前に、もう一度訪問する予定です。何か要望ありますか?」
「仮面の人物について、聞いてきて」
「ラルバに関する情報は?」
 タウラスの言葉に、村人から即座に反応が出た。
「ラルバ殿に関しての情報はありません……」
 訊いた時の相手側の反応に、少し気になるところはあったが、そこは言わずにおく。
「仮面の人物については、承知しました」
「もう少し、先住民に関しての情報が欲しいわ。生活様式とか」
「わかりました。そちらも、念頭においておきます」
 タウラスからの報告が終わると、続いて村の運営に関しての提案が行われる。
 橘・花梨から、以下の提案が出た。
・公衆浴場
・水車か風車
・氷室
「公衆浴場でしたら、今、温泉を掘っていますので」
 そう言ったのは、リィム・フェスタスだ。彼女は地魔法に優れており、その技能を活かし、地中を探っていたのだ。
「成功するかどうかはわかりませんが、大体場所の目星はつきました」
 リィム自身、温泉に詳しいわけではないので、断言はできないのだが、村の北西を中心に地中を探っていたところ、湧出の可能性はどの場所でもあるようだった。村付近に突然温泉を湧かせてしまっていいものか、その管理は誰がするのか、自分が温泉を運営するのか、村の運営とするのか、運営できる人物はいるのか?
 掘ることは魔法で可能であっても、その後の浴場としての場所造りは自分には無理である。配管も一人では無理だ。
 このように、色々問題があり、すぐには取り掛かれない状況でもあった。
「とりあえず、それに期待してみましょうか。お風呂は各家でも簡易とはいえ、用意できているでしょうし。温泉ならともかく、公衆浴場は直ぐ必要なものでもないでしょう。水車か風車は何の為に?」
 レイニの問いに、花梨が答える。
「将来的に小麦を挽くことや、水を引くことが検討できるやろ?」
「そうねぇ……これも、今すぐ必要なことではないけれど、大工仕事に余裕が出来次第、検討してみましょうか」
 ちなみに、水に関しては、付近に綺麗な湧き水が豊富に流れ出ているため、今のところ不自由していない。ただ、農業を本格的に行うことになったのなら、湧き水や井戸水だけでは、どうにも不安なところがある。川から水を引くことも検討したいのだが、若干距離がある。川の付近に田畑を設けられればいいのだが……。それには大きな問題があるのだ。
「で、氷室とは?」
「もう幾日かしたら、雪が積もるやろ? 積もってるうちに、それを洞窟の奥に詰め込んで「氷室」を作ったらどうやろ?」
「それなら、東側に、手頃な洞窟があるわ」
 村人の一人から声があがり、その洞窟に農業に携わっている人たちで雪を詰めることが決められる。
「リィム、食料の生産状況はどう?」
 レイニの問いに、リィムが答える。
「じゃがいもと小麦の栽培を始めたところです」
「じゃがいもと小麦かぁ……収穫は春になっちゃうわね」
「魔法で成長を促進していますので、早まるとは思いますが……」
「うーん。ホラロ、どれくらい魔法を注げば、どれくらい早まるもの?」
 傍らのホラロ・エラリデンに問う。
「そうですねぇ。あれくらいの範囲ですと、地魔法に長けた者が交替で日中通して魔力を注ぎ続けたとして、2倍くらいの早さで成長させるので精一杯でしょうかねぇ」
「リィム一人で日中注ぎ続けるのは無理でしょ。今はどれくらい魔力を注いでるの?」
「一日一度くらいです……」
「はははっ。それじゃ、1日1回必要分の肥料を与えているのと変わりませんねぇ。管理が良ければ収穫時の品質は望めますけれどね。まあ、人体の治療もそうですが、作物の成長促進もあまり過度に行うと壊死を引き起こすこともありますから、やりすぎは良くないですけどねぇ」
「冬季に収穫できないのは痛いわね。保存食もあまりないし……」
 考え込むレイニ。
 それぞれがそれぞれに食料対策はとっているが、寮の子供達や働けない者は村に頼る他ないのだ。
「モヤシやカイワレ大根なんかは、面白いように育ちますよー」
「急場はそれも考えるとして、普通に栽培しても、1ヶ月足らずで収穫できるものもあるでしょ? そういうものの栽培も考えてくれないかな? まあ、温泉の件もあるし、ホラロ、リィムの補助についてあげて」
「それなりの報酬があるのなら、やってもいいですけれど?」
「共有食料生産の方は、村の仕事だから、賃金が出るわよ」
「わかりました。お嬢さん、宜しくお願いしますねぇ」
 どうも生理的に嫌悪感を感じてしまう男ではあるが、その魔法知識は確かなものらしく、リィムは僅かに眉根を顰めながらも承諾する。
「先住民と違って、私達は冬にもある程度食料確保ができることが強みなんだから。頼むわよ、リィム」
 レイニはそう締めると、次の議題に移行する。
「さて、それじゃ、自分で議決を取るのはなんだけど、私の信任に移りましょうか」
 仲間から推薦を受けたレイニ・アルザラの提案は、建国をすること。王制とする。その場合、自分は宰相として政治を担ってもいい。というものだった。
 それに対しての意見は様々だった。
 代表的なものは以下。
●成年
タウラス・ルワール
【反対】
国家・反対
レイニの宰相・異存なし

オリン・ギフト
【信任】

シャオ・フェイティン
【信任】

●未成年
アルファード・セドリック
【反対】
国家・反対
王制・反対

橘・花梨
【信任】

リィム・フェスタス
【保留】
王制・反対
レイニの宰相・賛成

 投票結果を見たレイニは唸る。
「うーん、私が代表になることに対しての反対はないけど、私の考えには賛成できない人が沢山いるってことね」
「私は反対っ!」
 マール・ティアウォーターが立ち上がった。
「おばさんが村の長になることに、反対。おばさん、学園のこととか全然わかってない。学園では今、苛めが起きてるんだよ! 子供達が苦しんでる。そういうのわかってないもん。学園で起こってることは、村の大人達の縮図なのー。もう1回ちゃんと見直してよ」
 苛めという言葉に、会場がざわつく。皆の反応を得られたと、マールは詳細を説明しようと思ったのだが、
「マール。その件は後で聞くわ」
「後でじゃなくて、今聞いてよ! 今すぐ、見直してよー! 高等科では……」
「マール!」
 レイニの厳しい声が飛んだ。会場が静まり、マールは一瞬萎縮する。
「ま……また、効率の為? 話が進まないから? おばさんは……効率ばかりで、愛情がないの! 王様を作るのも反対! 人数少ないのに、いっぱい偉そうな人がいても仕方がないのよ! ……えっと、えっとっ畑とか村で管理している所で出来た物を収穫して、一度集めて、働いた人と村のお仕事をしている人に配って、その残りを蓄えにするとかすれば、税金とか無理に集めなくてもいいし!」
「……それに関しても、後で答えるわ。結論をいっておくなら、無理。もっと状況をよく考えてから発言しなさい」
 やっぱり、この人は、子供の発言を全然聞いてくれない。マールの心は悔しさでいっぱいだった。
「意見を聞きましょうか。まず、王制に反対の理由から。国を国王が治めるのは普通の事だと思うんだけど……。リィムとアルファード、答えてくれる?」
 アルファードから答える。
「王族を作ったら後継者争いが起こるのが世の常ッス。任期満了がある村長や大統領でいいんじゃないッスか?」
 そして、リィムの意見はこうだ。
「皆、同じ状況・同じ状態・全員平等、お互いに協力していくべき現状。上下関係を作るような事はしない方がいいと思うんです。皆を纏める為に国としたいのならば、それは、「王国」ではなく、「共和国」にするべきだと思います」
「なるほど……。後継者争いは随分先の話になるけれど、まあ、起こらないとはいえないでしょうね。上下関係に関しては、なければダメよ。共和制であっても、上下関係はもちろんあるでしょう。代表となる人物に強制力がなければ、国も村も纏まらないのだから。でも、リィムの言う、上下関係というのが、身分のことであるのなら、私も私達の中での身分の違いはない方がいいと思うわね。ただ、国王は象徴として欲しいのだけれど……こう、敬愛できる存在というのが、必要だと思うのよ。共和国だと、国の……ここの為に頑張るという意識持つ人が少ないんじゃないかって懸念があって。バラバラの状態が続くんじゃないかしら」
「結束を深めたいのなら、共通の敵を持つ事ですよ」
 ホラロがぼそっと言った言葉が、レイニとタウラスの耳に入った。反応を示さず、レイニは会議を進める。
「では、次に賛成意見聞いてみましょうか。オリン、シャオ、花梨意見ある?」
「とりあえず、やってみて、何が問題なのか見極めるでいいと思う。やる前から不満を述べて反対してしまっては、子供と変わらないからな」
「そうや。この人数で王国っちゅーんも何やけど、まあ、やってみてもええんちゃう? 別に後で取り返しのつかんってもんでもないやろ、この場合……。国王決めるんは、相応しい人物が現れてからやろ? 現れんかったら、共和制みたいなもんやし、国王に相応しい人物が現れたら、そんときまた、皆で決めるわけやし」
 オリンの意見に、花梨も賛成する。
 村の一員になったばかりのシャオの意見はこうだった。
「可も不可もない。冬という急場を凌ぐ手段としては、悪くはない。名より実を取るということか? 状況が状況だけに、効率主義は確かに悪くない。だが……やる以上は泥を被る覚悟が要る。おまえにそれがどこまで出来る?」
 投げかけられた問いに対し、レイニは小さく吐息を付く。
「別に、効率主義ってわけじゃないんだけど。今まで効率が悪すぎただけ。人が足りないから、今でも全然仕事回ってないわよ。……泥を被る覚悟ねぇ。私はやりたくて皆の上に立とうってわけじゃないから。さしずめ、泥を被らされてあげるってところかしら。他に適任者がいなく、皆が私がいい。私について行くというのなら――」
 言葉を切ると、不適な笑いを浮かべる。
「命を賭して、皆を守ってあげるわ」
 言った途端、拍手喝采が沸き起こった。レイニは港町出身である。洪水時、洪水後の実績だけではなく、彼女には長く培ってきた人望がある。
「ですが、レイニさんのお考え、全てを通すのは無理だと思います。個人的には……本人の意思が重要だとは思いますが、レイニさんはこのまま会議を取り締まる役割を受け持ってもらって、先住民と接触したタウラス・ルワールさんに代表になってもらう、というのは、どうでしょうか? 先住民側も、タウラスさんが私達の代表だと認識しているでしょうし」
 そう言ったのは、リィムだった。突然の提案にタウラスは戸惑いを隠せない。
「タウラスには難しいんじゃないかしら」
 レイニはリィムの提案を否定した。
「その場合、私が議長を務めたとしても、権力の方はタウラスに行くわけでしょ? 代表として率いるのには、それなりの指揮能力、実行力。時には強行力が必要だけれど、その点に関して、彼はまだ未熟だわ。協力者がもっといれば、いいんだけれどね……。
 では、最後に、建国反対の意見をお願い。アルファードと、タウラス」
「そりゃ、先住民の土地に国を立ち上げるのは横暴だと思うッスから!」
 確かに。アルファードの言葉は直接的で分かり易かった。
「ん〜。先住民といっても、彼等には、領土って概念ないみたいだし。そう考えると、この島に先に住んではいたけれど、ここの土地は支配もしていなければ、領有宣言もしていなかったわけでしょ。私達が占有することが認められたんだから、建国しても問題ないと思うけどねぇ。彼等には、国って概念もなさそうね。まあ、このあたりは巧みな交渉が必要かもしれないわ。
 ……で、タウラスは?」
「代表が決まるまでレイニ殿が宰相役をされるのに異存はありません。ですが、国を作りたいという考えには賛同しかねます。
 たしかに、気持ちを切り替え団結するのは大切なことでしょう。それでも、皆さんに望郷の想いを捨てろとおっしゃっているようで、受け入れがたいのです……」
 彼の言葉は、村の人々の心に響いた。
 そして、もう一言、彼は続ける。
「それに……私は主と共に国に仕える身、二つの国に忠誠を誓うわけにはまいりません」
 その後、しばらく――沈黙が続いた。
「寂しいことを……言うのね……」
 レイニが、小さく呟いた。
 気持ちを切り替えるように、深呼吸をすると、レイニは皆に向かって言った。
「とりあえず、私を代表にすることに対しては皆、異存はないようだし。タウラスを代表にって意見も出ているから、後は、私とタウラスで話し合ってみるわ。結論は次の会議までに出すわね。……私が辞退する場合には、その時にまた、皆で話し合いましょう」
 今月の会議はここで終了となった。

 会議後、レイニ・アルザラはマール・ティアウォーターを引き連れて、執務室に戻る。マールを待っていたシオン・ポウロウニアと補佐のタウラス・ルワールも一緒だ。それともう一人……。
「あなた達、このおじさんを、追い掛け回してるんですって?」
 レイニの隣には、ホラロ・エラリデンの姿があった。髪を切り、髭をそり、マールとシオンが以前出会った時より、小奇麗になっていたが、顔と雰囲気の気持ち悪さは変わらない。
「うん、ちょっと気になってさ〜」
 くったくない表情で、シオンが言った。
「おっさん、何処から来たんだ? 船には乗ってなかったよな」
「おじさんはねぇ、北海に面した国出身なんだよ。君達より先に、この島に着いていたんだ」
「ふーん。ねぇ、おっさん、俺達のこと、食べごろって言ってたよな。それってどういう意味〜?」
「食べごろ……って、あんた、そんな事言ったの?」
 レイニが白い目でホラロを見る。
「いや、ほら、あー、お嬢ちゃんが持ってた林檎がねー。この間はいただいちゃってごめんねぇ。おじさん、お腹空いてたから」
「違う! 林檎の事じゃないもん。シオンとルルナを見て……嫌な目で、見て……にやにやしながら、食べごろって。わたしのことは、熟れ過ぎって言ってた」
「い、いや、それは……」
 マールの言葉にうろたえるホラロ。
「へぇー。それがつけてた理由てわけ?」
「そう。悪いことしているのを見つけて、捕まえなきゃ、このおじさんが危ない人だって、信じてくれないと思ったから……。いつ子供に手を出すかわからないし、見張ってないといけないと思ったから」
「だって、ホラロ」
「ははは、誤解ですよ。私が子供に手を出すはずがないじゃありませんか。そんな言葉に反応するなんて、まいったなぁ、お嬢ちゃん」
「なるほど、全くの無実ではなさそうねぇ。タウラス、とりあえず、幼女猥褻は死刑って刑法追加しておいて。布告もお願い」
「な……レイニさん、ソレ職権乱用デハございませんカ……」
「ちゃんと会議にかけるわよ。それまで仮施行ってことで。仮施行時の犯行については、会議を通ったら遡って適用させるから、そのつもりでいてね。会議はすんなり通ると思うわ。子供を持つ親ばかりだからねぇ。私も許せないわ。娘を持つ親として。……ああ、タウラス、死刑はさすがに冗談。15歳未満の未成年強姦は極刑、強制猥褻は終身刑にしておいて」
 わかりました。とタウラスはメモをとる。
「さて、この外見で、そんな事を言われたら、あなた達が不安に思うのも無理ないけど、一応この人はそこまで危ない人じゃないわ」
「でもっ。でも、魔法を使おうとしたら、使えなかった。変な力を持っているのよ!」
 ホラロに触れられた際、マールは水魔法を発動させようとした。しかし、魔法は発動しなかったのだ。
「それはね……。このおじさん自身が魔法を封じられてるからなのよ。このおじさんに触れていれば、魔法は使えないってわけ……って、あなた、マールに触れたわけ?」
「いやあ、ははははは」
 途端、肘鉄をホラロの腹に叩き込むレイニ。げふっと腹を抱え、ホラロはうずくまる。
「魔法の勉強ばかりしてた人だから、太ってるど、非力なのよ、この人。ヘンなことしてきたら、構わず急所蹴り上げていいから。あなた達も、もう追い掛け回すのは、やめなさい」
「でも……っ」
 ホラロの目は、耐え難い。昔を思い出してしまう……。マールには、辛かった。
 マールの気持ちを察したのか、レイニはホラロに子供に近づかないよう警告し、退出を命じる。
「それじゃ、本題ね。会議での件だけど」
 レイニの言葉に、マールの中に怒りが蘇る。
「あそこで言って、大人皆に聞いてもらわないと、意味がないのに。どうせ、おばさんに話しても無理だもんっ」
 マールはふて腐れていた。ここにだって、引きずられてきたようなものだ。
「村で管理下の収穫物を、労働者と公務に携わる人々に配り、その残りを蓄えにする。だっけ?」
「そうよ、そうすれば、税金とか集めなくてすむもん」
「じゃあ、聞くけど。子供や老人のように、働けない人はどうやって暮すの? 税金ないんじゃ、援助できないわよね」
「それは……蓄えから……」
「蓄えだけで足りなかったら? 収穫物配るというけれど、配るという仕事は誰がするの? 配るという仕事をした人へは、その分収穫物を大めにもらえるわけよね? 蓄える場所は? 蓄える場所はどのように作る? 蓄える場所を作った人には、どれだけの配分をする? どのような分配率にするの? 喧嘩にならない? 林檎一個と、蜜柑一つでは、どちらが高価? 分けているうちに、腐っちゃったら? 蜜柑は欲しくないけど、林檎は欲しい人がいたらどうする?」
「それは……一旦売って、お金にしておけばいい」
「お金にして、分配したら残らないじゃない」
「何割かは、村の蓄えとして貯金しておけば……」
「なるほど、収益の何割かを、労働者から徴収するのね。つまり、“税金”ね」
「…………」
「まあ、それは随分と強引な言い方だということは認めるわ。収益は村のものとなり、その中から給料を支払うってことになるんだろうけど、労働に見合った賃金を支払う必要性や、村の管理下の菜園だけでは、運営費に到底届かないといった、様々な問題があるのよ」
 顔をしかめて言葉を出せないマールを見下ろしながら、レイニは話を次へと移行させる。
「あと、学園の問題ね」
「そ、そうよ! 学園は大変なんだからっ。ルルナが皆に苛められて……」
「それで? ルルナが苛められてるって、村中に公言するわけ?」
「うん。大人達に知ってもらって、体制を見直してもらわないと、いつまでたっても、子供達が苦しいままだもん!」
「それで、苛めている子は悔い改めるの? ルルナは嬉しいの? 村中に苛められてる子だって知れ渡って、苛められている理由を詮索されて。ルルナも悪いって意見も出るでしょうね。お姉ちゃんはとても悲しむでしょうね」
「だ、だけど言わなきゃ直らないもん! 勇気をもって、そういうのは言わないとダメなんだから」
「そうよ。自分でどうにかできないことなら、勇気をもって、言わなければならない。だけど、マール。本当に学園をどうにかしたいのなら、まず、自分が動きなさい。大人に文句を言うのではなく。
 子供同士でしか知れない実態もある。子供同士でしか、救えない事もある。私達、大人じゃ、ルルナの友達になってあげることは、出来ないのだから。まず、見極め、周囲の者達と改善を目指し、ダメなら、学園に携わる大人に相談し、共に対策を考え、実行する。それでもダメなら、村の状況を見定めながら、改革を考え、詳細を詰めてから、会議で発案。もしくは、私のところにもってらっしゃい」
 詰めてから、会議で提案……。それは、別件で、タウラスも言っていた。
「そんな、ゆっくりしてられない。直ぐに改善が必要なの!」
 途端、レイニがバサッっと、書類の束を机に出す。一番上の書類には、543と番号が振られている。
「今までに、私のところに届いた、生活の苦情、政策案、諸々の改善案がこの数。うち、152件対応済み。123件保留。未対応で、早急な対策が必要なものが31件。
 で、この状態の私やタウラスに、生徒の保護者一人一人を回り、苛めについて対応をしろと、そう言うの? あなたは」 
「そんなこと言ってるんじゃない。学園のシステムを変えれば、それだけで変わるんだもん!」
「だから、それが学園内で問題の解決が出来ないことなら、まず、学園の現場を自分で見る。村の人々に接し、その暮らしを見る。そしてどう改善することができるのかを、学園で詳しく検討しなさい、って言ってるの。苛め問題を解決するために、会議で話し合い、例えば3日間の労働を休み、3日分の食料がなく、3日間断食をして運営を見直したとして、3日で現場にいるわけではない大人が作り出したシステムが、実際通う子供達にとって良いものになると、いえる? また問題が発生するに決まっているじゃない。解決は、学園側で目指す。そして、システムに問題があるのなら、詳細を詰めてから、会議や、私に提出。それが基本。わかるわね!?」
 最後は有無を言わせない、強い口調であった。
「……あなたは、既に動いているんでしょ。警備隊を作ろうと必死に。倒れたって話も聞いてるわ。そう、本当にどうにかしたいのなら、動く。誰かを動かすことも大切だけど、まずは、自ら動き、できることをする。大人の言う事を聞くのは嫌。でも、大人は自分達のいう事を聴くべき。学園に行くのは嫌。だから誰かに改善してもらう。それは我侭。ここでは、通用しないのよ。
 あなたが、子供を守りたいと思う気持ちは本当なのだから……やれるわよね、マール!」
 唇をかみ締めていたマールは、突如、執務室から飛び出した。
「姉ちゃん!」
 シオンが後を追う。
「……レイニ殿、少々厳しすぎはしませんか?」
「何言ってるの、タウラス。ここからが、あなたの仕事でしょ。早く行って、慰めて築きあげるのよ」
 当然のように言うレイニ。ため息をつきながら、タウラスはマールを追うのだった。

*        *        *

 リィム・フェスタスが管理する、栽培ハウスでは、作物の栽培が始められていた。
 室内温度の件では、火属性のアルファード・セドリックから火力の調整の協力を受けており、概ね順調だ。
 環境が悪くとも栽培が可能なものという考えで、じゃがいも、小麦を植えた。
 じゃがいもは連作が難しいことや、じゃがいもと小麦では室温調整が違ってしまうこと、他の作物の栽培も同時に始めようとしているため、仕切りの必要性等、色々問題はある。
 また、会議でも出たように、この二つの作物では、普通に栽培したのなら、3ヶ月はかかってしまう。地の魔法で促進させても、真冬の収穫は無理だろう。
 地魔法を注ぎながら、作業に子供達を加わらせてはどうかと、リィムは思う。学園担当者に申し出てみようかと、考えるのであった。
 作業を終わらせ、栽培ハウスから、外に出ると、冷たい風が吹き抜け、肌を襲う。身を縮ませながら、リィムは自宅に急ぐ……。

 そんな、厳しい寒さの中。この難民達の村に訪れる者があった――。

 虚弱体質なテセラ・ナ・ウィルトにとって、ここまでの道は、地獄のようであった。何度意識を失いかけたか知れない。
 川沿いを登って数刻。まずは、伐採地までたどり着く。
 その先が巨大な岩石に塞がれていたのだ。体力のある男性であれば、越えられただろうが、テセラには無理である。迂回するより他なく、普通の成人男性の1.5倍は歩いたと思われる。かかった時間は2倍近いだろう。
 早朝出発したにもかかわらず、目的の場所が見えた頃には、昼をとうに過ぎていた。
「セラ姉様、ようやく着きましたね……」
 そう言う、同行者ルビイ・サ・フレスの足も既に棒のようになっていた。
 木々が開けたその場所には、2人にとって、不思議な空間があった。
 森と集落の間は門で閉ざされており、周囲には木の柵がめぐらされている。
 集落内の大地は整えられ、網の目のような道がある。
 木で作られているようなのに、木を削り組み立て、加工された家。
 石造りの家は、牢のような印象を受ける。固く、冷たく。とても頑丈。
 女性の姿が多い。子供を連れた女性が家に入っていく姿。買い物を忙しそうにする女性。
 男性は狩りに出ているのだろうか? とテセラは考える。それほどに若い男の姿が少ない。
 さらに奥の方には、囲いの中に動物の群れが見える。手前の細長い小屋は何だろうか。
「タウラス・ルワールさんに、つないで下さる?」
 テセラは、柵の外から、通りかかった女性を大声で呼び、先日湖の部族の集落に現れた男性の名を出した。
 女性は明らかに不信な顔を見せながらも頷いて、集落の中央へと向かっていった。
 しばらくして、タウラス・ルワールが現れる。
 テセラは族長に話しを通し、難民達の暮しを視察に来たと、タウラスに告げた。タウラスは快く彼女達を迎え入れる。
 タウラスは役場の前でテセラ達を一旦待たせると、さすがに秘密にしておくわけにもいかず、レイニ・アルザラに報告を入れるのであった。
「ちょっと早すぎたわね。もう少し安定してから招きたかったんだけど……」
 そういいながら、レイニはタウラスに村の案内を指示する。
 しかし、テセラ・ナ・ウィルトの疲れは相当なもので、案内は早々に切り上げ、応接室で休みがてら、談話をすることになった。テセラ、ルビイに、レイニ、タウラスが向かい合う形で座る。
 互いの紹介と挨拶が済んだ後、ラルバの話に移る。案内中、テセラはタウラスにラルバの探索に関し、協力を申し出ていた。そのために、ラルバについて詳しく教えて欲しいと。
「名前は、ラルバ・ケイジ。髪は短髪茶色。瞳の色も茶色。長身で筋肉質な男性です」
 レイニがラルバについて説明をしていく。語られる外見は、ルビイが知るラルバと一致していた。探索隊と逸れた場所についても、ラルバが語っていた場所と同じと思われる。
「あの。そのラルバという人の家族がいるなら、その人たちからも色々話を聞かせて欲しいです」
「あ、もちろん無理にとはいいません。まだ、互いの事を殆ど知らないわけですし。……でも、困っている方がいるなら、やっぱり助けてあげたいって思うのが人だから……」
 ルビイの申し出にテセラが付け加える。
「彼には妹が2人います。妹の方はまだ子供ですのであなた方を怖がるかもしれません。姉の方でしたら、大丈夫でしょう。よろしくお願いしますね」
 柔らかにレイニは話し、タウラスにルビイをミコナ・ケイジの働く食堂へ案内するように命じた。
「ウィルトさんとは、もう少しお話しをさせていただけますか?」
「構いません。私の方もお聞きしたいことがありますから」
 テセラは応接室に残ることになり、ルビイとタウラスは食堂に向かった。

「ご迷惑おかけした、伐採のことですけれど」
 レイニは、村周辺を簡単に描いた地図を広げた。
「どの辺りの伐採があなた方の集落に影響を与えたのでしょうか?」
「ええと……この辺りです」
 テセラが崖付近を指差す。
「この付近……ですか」
 怪訝そうな顔をするレイニ。
「被害はありませんでしたが、土砂が普段立ち入る場所に雪崩落ちたというわけです。今回はたまたま誰もいませんでしたが、同じようなことがまたありますと、こちらの生活が脅かされます。このあたりでの伐採と、一箇所での大量の伐採はしないよう、お願いいたします」
 この件に関しては、強い口調で主張するテセラ。それに対するレイニの返答でテセラは難民と自分達の考えの違いというものを感じさせられることになる。
「土砂崩れに対しては、謝罪させていただきます。まだあなた方の存在を知らぬ時期とはいえ、地盤の調査を行わなずしての伐採は早計でした。後ほど正式に謝罪にも伺わせていただきます。場所に関しては、あなた方の居住地、活動場所を確認させていただき、被害を及ぼすことのないよう、細心の注意を払うことをお約束いたします。
 ただ、一箇所での大量の伐採は、こちらとしては目的を持って行っております。川沿いの伐採に関しては、木材の調達と、将来的な開拓を目指し行っておりました。農業に適した場所ですので。住居の為の土地には不自由していませんが、今後の安定した生活、子供達の独立、将来的な世帯数増加を考え、村周辺の開拓も進めなければなりません。
 また、村の外の地に村人が寛げる温泉や遊技場の検討をしている者もおります。
 牧畜も将来的には住宅地と離した適切な場所を設けるつもりです。飼育、繁殖を住宅地で行うのには、色々問題がありますから」
 レイニの言葉はテセラを混乱させた。
 なるほど、先ほど見た囲いの中の動物達は、人間により飼育されているのだ。長い小屋は、小動物だろうか。囲って、育てて、殺して、食料とする。そういう方法をとっているのか、と。
 また、自分達からすれば、一箇所での大量伐採は考えられない。大量に同じ場所の木を切り倒したら、その場所は森ではなくなってしまう。木が育つには、長い年月が必要なのだから。
 しかし、彼女達はそれをわざとやっているというのだ。森を切り開き、平地にしようと。至極当然のように。普通に語るのだ。
 必要な分だけ、木を切り。
 必要な分だけ、狩りをして食物を得る。
 そんなふうに、自然と共に生きているテセラには、俄かに受け止めがたい話であった。
「族長に、お話ししておきます……」
 テセラにはそう答えるのが精一杯であった。
「それから、こちらの代表ですけれど、お恥ずかしいことに、今だ正式には決まっておりません。現在は私が皆の意見を取りまとめていますが、他の者が長となる可能性もあります。
 こちらの代表が決まりましたら、あなた方の長と、他にこの島に住む民族がいるのなら、その長も含めた、代表による会談を提案いたします」
「わかりました。検討しておきます」
「あ、先日の冬支度についてのご教授には、とても感謝しております。いずれ、お礼をさせていただきたいと思っています」
 そう言って微笑むレイニに、テセラはお互いの立場に対する考え方の違いというものも、なんとなく感じるのであった。
「ところで、黒尽くめの集団をご存知でしょうか?」
 テセラは伐採地に消えたという仮面の集団の事を話しに出す。
「黒尽くめの集団?」
「ええ、仮面を被った黒ずくめの集団です。部族の者が何度か襲われ困っているのです」
 伐採地で見失ったということは、今は言わずにおく。
「集団ではありませんが……仮面を被った黒装束の人物に襲われたという者が、こちらにもおります」
「こちらにも被害が……!」
 被害が出ているということは、難民側の人物の仕業ではないということなのか……それとも、襲われたという人物がいるということ自体嘘ということもありえる。
「私共だけを狙っているわけではなさそうですね。こちらも十分気をつけてください」
 テセラにしては、難民達を気遣って言った言葉だった。
「無論、対策を練っています。しかし、こちらの民にはそのような行為をする者はおりません。また、逃げた犯人の特徴からして、こちらの民ではないことは確実と思われます。そちらのテロリストであるのなら、早急に対策をお願いいたします。場合によっては、被害を受けたこちらに対しての、謝罪と補償をお願いするかもしれません」
 レイニは微笑んでいたが、テセラは身が引き締まる思いだった。
 自分達ではないと主張する様は、村の代表として当然のことなのだろう。
 テセラは交渉というものの難しさを痛感した。

 一方、ルビイはタウラスとともに、食堂に来ていた。
 ラルバ・ケイジの妹、ミコナ・ケイジは、鍋や食器を台車に載せ、学園寮へ向かうところであった。
 タウラスが、ミコナにルビイを紹介する。
 ミコナは戸惑いながら、ルビイを見たが、ミコナに会いにきた理由を聞くと、ありがとうございます。と会釈したのだった。
 ルビイは台車を押すのを手伝いながら、ミコナに兄の事を聞く。
 途端、ミコナは寂しそうに視線を落としたのだった。
「初対面なのに不躾に聞いてしまってすみません。でもあのっ、僕にも兄様がいるらしいから……あ、『らしい』っていうのは僕が記憶殆ど無くしちゃってて覚えてないからなんですけどっ」
「記憶、なくしてるのですか?」
 気遣うように見るその目はとても純粋で、ミコナの優しさをルビイは感じた。暖かな茶色の眼が、あのラルバ・ケイジとよく似ている。
「はい……覚えてない僕でも逢えなくて寂しいんだから、覚えてるあなた達はもっと寂しいのかな、とか思ってしまって……なんか、辛いです。だから、お手伝い……したいんです」
 そのルビイの言葉に、こくり、と頷いてミコナはこう語った。
「髪も目も茶色で、肌は地は白いんですけど、日焼けして褐色に近いです。私より、頭一個分くらい、身長が高くて、とても運動ができます。行方不明になった時には、青色の上着を着ていました。性格は、優しくて、真面目で……一途なところがあります。あなた方とお会いしても、喧嘩になるなんてことは、ないと思います」
 寮への配達が終ると、二人は近くのベンチに腰掛ける。タウラスが少し離れたところで、二人を見守っている。
「寂しいというか……今は、とても怖いんです」
「怖い、ですか……」
「兄が……このまま帰ってこなかったらって思うと。もう、1月以上経ってるんです。食料なんて1日分も持ってなかったし……足を滑らせて、崖から落ちていたら……怪我をして動けなかったのなら……凶暴な動物に襲われてしまったら……。考えたくない、考えたくないけれど……。兄に、もしのもことがあったら……。怖い……ただ、怖いんです」
 ミコナは泣き出してしまった。
 ルビイは明るく元気付けようとするけれど、ミコナの不安は相当なもので、その気持ちを癒すことはルビイにはできなかった。
 ルビイは知っている。ミコナの兄、ラルバが自分達の集落で軟禁されていることを。兄は無事だと、ミコナに伝え、励ましたかった。
 でも、今は言えないのだ。テセラに止められている。事情がバレれば、難民側との関係が険悪になったり、彼女達がパニックに陥る可能性があるから、と。
(ラルバ様は、無事です。ミコナさん達を案じていますよ)
 その言葉が一番、彼女を安心させてあげられるとわかっているのに。
「僕も探しますから。必ず、戻ってきますよ、あなたのところに……大丈夫ですから」 
 しばらく、ミコナは泣いていた。
 身を震わせて、泣いていた。
 彼女が世話になっている食堂から、迎えが来るまで。
「何やってんの、ミコナ! サボってんじゃないよ!」
 厳しい叱責だ。ミコナの苦労が窺い知れる。
 仕事に戻らなきゃ。と立ち上がったミコナは、ルビイにこう言った。
「私、毎日祈ってるんです。祈ることしかできなくて……。お兄ちゃんが、早く帰ってきますようにって。
 今日からは、あなたの事も祈ります。あなたの記憶が戻りますように。大切な思い出を取り戻せますようにって。
 ありがとうございます。ルビイさん」
 ミコナはそう言って、ルビイを軽く抱きしめた。
「私達の大切なお兄ちゃんを取り戻せますように……」
 食堂に戻っていくミコナを、ルビイは複雑な思いで見送った。
 言ってしまいたかった。ラルバは無事たと!
 でも、言え、ない……。

 タウラスに、末妹のルルナ・ケイジが姉と離れ、寮で生活をしているという話を聞いた後、ルビイはテセラと合流し、帰路につく。
 じき、日が暮れる。登りほど時間はかからないとはいえ、急がねばならない。
「ねえ、セラ姉様。あの人はきっとまた妹さんたちと逢えますよね? 犯人だなんて疑いは、ぜったい晴れますよね……?」
 と、ルビイは前を歩くテセラに問いかけた。テセラには全て話してある。
 不安気なその問いに対し、テセラは、そうね……とだけ答えたのだった。

*        *        *

 放課後、学園の高等科では進路相談が行われている。
 高等科の教師である、オリン・ギフトは、一人一人と面接をし、将来の夢や、悩みを聞き、生徒達に助言を与えていた。
 オリンにも、高等科の中でなんらかの事件が起きていることが、うすうす分かっていた。ルルナ・ケイジが当初の頃と違い、学園に来なくなったことや、発言を殆どしなくなったことから、彼女を取り巻く何かのトラブルがあるのだと。
 早速、ルルナと面談をし、優しく問いかけてみる。 しかし、彼女は何も言わなかった。『何でもないよ、授業でます。ごめんなさい』そう答えたのだった。
 将来の夢については、『お兄ちゃんに、武術を習って、強くなって、村を守る人になる』と答えた。
 しつこく聞くわけにもいかず、何かあったら、先生に相談しなさい。と頭を撫でて、面談を終える。
 最後に、部屋から出る前。
 ルルナはこう言葉を残した。
「先生……誰かがルルナのこと、何か言ってたとしても。絶対人には言わないで。ルルナは大丈夫だから。……知られたく、ないの……」
 苛められていることを、姉に知られたくないのだろう。
 いじめを親に言えない子供は多い。
 しかし、一人で抱え込んでいることが、その子にとって、どれだけ辛いことか。
 オリンはルルナに、「先生はルルナの味方だから、一人で悩んでいたらダメだぞ」と、そう声をかけるのであった。

 いじめをしていると思われる人物、バリに関しては、どう穏やかに諭しても、事実を認めようとしなかった。
 やっていないの一点張り。
「好き嫌いをはっきり言ってるだけ。別に先生に叱られるようなこと、俺してないです」
 バリはオリンに話しをしようとはしなかった。

 次に、オリンは高等科で一番年上の、アリンという女子生徒と面談をする。男子の中では、バリが中心になっているように、女子の中では、彼女がリーダー的存在であった。
 そのアリンの発言に、オリンは深く悩まされることになる。
 それとなく、クラスで起きている問題について聞くと、彼女はこう答えた。
「私は別に何もしてません。普通に、友達と話しして、普通に勉強してるだけです」
「クラスの友達、全員と仲良くしてるかい?」
「…………」
 押し黙る彼女に対し、皆と仲良くするよう、勧めるオリン。何か問題があるのなら、先生に話してみるように、と。先生は皆の力になりたいと思っているということを、彼女に話し、諭していく。
「先生……今日は、進路相談だよね」
「ああ、進路についても力になるぞ」
「私ね……私は……」
 俯いていた顔を上げ、彼女は言った。
「私は、先生のお嫁さんになりたい!」
「!?」
 さすがのオリンも突然のその言葉には、動揺を隠せなかった。
「私、バリ君の気持ち、わかる。ルルナは……泣きついて、お兄ちゃんに泣きついて船に乗せたから。ルルナには、お姉ちゃんも、お兄ちゃんもいて……でも、バリ君には両親も兄弟もいない。
 私にも、お祖母ちゃんしかいなくて、お祖母ちゃんが死んじゃったら、私一人になる」
 真直ぐ、真直ぐにオリンを見て、アリンは言葉を続ける。
「一人になるのは……いや……お父さんも、お母さんもいなくて……何も、かも、失って……私……死んだ方が良かった。お父さんとお母さんと、一緒にいたかった。一緒に……一緒に逝きたかったよ……」
 彼女の目から、涙がこぼれた。
「先生……私だって、家族が欲しい。失ったものは手に入らないけど……だったら、だから、自分の家族が欲しいよ、先生! 頼れる男の人と結婚して、子供を産んで、一緒に生きて、育てていくの。学園に友達は沢山いるけど、やっぱり血のつながった家族が欲しいの!」
 頬を伝った涙が、顎から落ちる。一粒。また一粒――。
「先生、私はもうすぐ15になるけど、私より年上の女の人は沢山いるのに、私より年上の結婚してない男の人は、殆どいないんだよ? だから、私は男子に嫌われたくない。男の子と仲良くしていたいから、バリ君が嫌いなルルナを……苛めるようなことはしないけれど、仲良くすることはできない。だけど、先生! 先生が私と結婚してくれるのなら、私はルルナとも仲良くする。女子皆にルルナと仲良くしようって言うよ。先生は……先生は、この村で一番頭がよくて、医者としてみんなに信頼されてる。誰も先生以上の知識はもていから。私は先生が一番だと思ってる。こうやって話を聞いてくれる、先生が好き。だから、先生がいいの。私は先生と結婚したいっ!」
 お願い……っ。と、アリンは涙をぽろぽろと零す。
「卒業したら、私、先生のところで働いて、医者の勉強もする。先生の助手として役に立つし、家族を失った村の女の人の気持ちや子供の気持ち、よく分かるから、カウンセリングの仕事もするよ」
 だから、先生、私と婚約して――
 アリンは、真剣に、必死にオリンに訴えた。

 教室に戻ってきたバリと、シオン・ポウロウニアが顔を合わせる。
 いつの間にか、二人はお互いを認め合う存在になっていた。シオンは何でも器用にこなすし、バリは魔法に対する才能は乏しいが、その他、勉強にも運動にも秀でており、仲間からの信頼も厚かった。二人の距離は急速に縮まっていった。
 そんなバリが何故ルルナを苛めるのか、シオンにはわからなかった。
 シオンは積極的にクラスメイトとかかわり、それにルルナも加わらせようとするのだが、誰もルルナには話しかけようとはしないのだ。シオンが少し目を離すと、ルルナは孤立している。シオンが庇うようになってからは、シオンの前でルルナが中傷されるようなことはないのだが、それでも彼女がクラスで仲間外れにされていることに、変わりはなかった。 
「何でお前、ルルナにあんなこと言うんだ?」
 この日、シオンは単刀直入にバリに聞いた。すると、逆にバリが聞いてきたのだ。
「お前こそ、なんでルルナと仲良くできるんだ?」
「ルルナが何か悪いことしたか? 何もしてないだろ。だったら普通に仲良くするだろ」
「シオンも、家族いないんだろ? お前は、ルルナがしたこと、許せるのかよ」
「したこと?」
「ルルナは……」
 一旦、言葉を切り。
 腹の底から悔しそうに。心底悔しそうな顔で、バリは言うのだった。
「ルルナは、船を下りようとした、兄貴に泣きついた。我がままいって、泣きついて、船に兄貴を乗せたんだ」
「ルルナに家族がいて、自分にいないから、ルルナが羨ましいのか? それで苛めてんのかよ」
「っ……。お前はなんとも思わないのか!? 俺は……」
 吐き出すように、バリは続ける。
「俺は我慢した。両親と年の離れた兄貴が俺を乗せて船を下りるのを黙って我慢した。我慢した俺が間違っていて、我がままを言った、ルルナが正しいのか!? 我慢した俺は一人で、我がままを言ったルルナだけ兄も姉もいて、幸せな暮らしが待っているのって不公平じゃないか!」
「お前は間違っていなかった……だけど、ルルナが悪いわけじゃない」
「いや、ルルナは間違っていた! 俺はルルナが間違っていないと認めることはできない。
 ……そしたら、俺は……兄貴を見殺しにしたってことになるじゃないか。ルルナのように、泣きついて兄貴を乗せれば、兄貴も助かったんだ……。でも、それは、してはいけないと思った。俺は我慢した。俺は正しいッ」
 バリは泣いていた。
 それは、シオンには理解の出来ない感情だった。
 幼い頃の辛い経験で、シオンには悲しいという感情が欠落している。
 だから、彼が苦しんでいることは分かっても、その気持ちを理解することは、できなかった。
「お前だって、自分の大切な人が、何かの犠牲にならなきゃいけないのに、我がまま言って、自分の大切な人だけ守ったルルナを見たら、そしたら、絶対ルルナを認めることなんて、できない。
 俺は我慢している。殴りたくても、ルルナに手を出したりはしていない。ルルナの兄を責めたりしていない。我慢して我慢して我慢してルルナを嫌いだということだけ、言ってるだけだ。ルルナは、卑怯だッ!」
 シオンは今、一番好意を持っている人物の事を思い浮かべる。
 もし、彼女の身に何かがあったのなら……。
 自分はバリのような感情を持つのだろうか、と。
 走り去るバリを見ながら、そう考えていた。

*        *        *

 森が、姿を変えていく
 さらけ出していた枝を、白い綿で覆って
 草臥れた地に、純白の毛布をかけて
 ゆっくりと
 幾重にも、包み込まれて
 静かに、静かに着飾ってゆく――


 住居の補強が進み、皆が、雪掻き道具を作り始める。

 タウラスの提案だ。皆に呼びかけていたもん。
 顔色よくないのは、ご飯とかちゃんと食べてないせいよね。わたしがちゃんと家の面倒みてあげないと。
 マール・ティアウォーターは契約どおり、タウラス・ルワールの部屋を守っていた。タウラスは先住民との交渉に出かけている。
 タウラスファン倶楽部のメンバーから、たまに嫌がらせを受けたが、そんなことは気にせず、追い返す。自分が防波堤になって、おっぱらわなきゃと。
 自分の役目を今、マールは持っていた。
 ふと、家に届いた新聞に目が留まった。
 タウラスの部下である、ピスカの記事だ。
「あの時のことだ……そっか、あの人……」
 軽快に書かれた記事に次第にマールは引きこまれていった。

●冬季新聞●

「タウラス、大人気だね」
 マールは少し、誇らしかった。
 警備隊のメンバーもタウラス目当てか、少しずつ集まっているようだ。
 ただ、「本職の合間に」という人が殆どであり、隊を率いる人物が未だいない状態だ。

 ――雪が舞い、降り積もる中、先住民との交渉を終えたタウラス・ルワールが村に帰還した。
 タウラスは、一通の手紙と、包みを手に、ミコナ・ケイジの元を訪れる。
 それは……兄、ラルバ・ケイジがミコナに宛てた手紙であった。
「私も直接面会したわけではありません。詳しいことは分かっていません……。妹さんには秘密にしていただけますか? 今はまだ、慎重に扱いたいことなのです」
 ミコナは手紙と包みを受け取ると、貪るように手紙を読み……そして泣き崩れたのだった。
「確かに……兄の字です。妹には、言いません。ですから、兄の情報をください!」
 手紙を広げて、タウラスに見せる。
 その内容は、自分の置かれている状況については殆どかかれておらず、妹達を心配する言葉ばかりであった。
「兄は……兄は、いつもこうです。自分が危ない状況にあるとき、戦場にいる時に、こういう手紙を書くのです。自分の事は殆ど書かず、家族のことばかり心配して、私達の事ばかり、案じてくれるのです。――タウラス様! 本当は何かご存知なのではありませんか? 慎重に扱いたいからと、私に隠しているのではないですか? 少しでも、少しでも情報が欲しいんです。お願いです。教えてくださいっ!」
 タウラスは静かに首を横に振った。何も知らない、と。力になれず、申し訳ない、とミコナに謝罪した。
「それなら、私を兄の所に連れて行ってください! 手紙を兄から受け取ったのでないのなら、その人の所へ連れていってくださいっ。私が兄と会い、連れ戻します。なんとしてでも、兄を連れ帰ります!」
 叫ぶミコナに対し、タウラスは何も出来なかった……。
「どうしてですか、タウラス様! 村は兄の為に動いては下さらないのですか!? 兄は皆の為に探索に出ていたというのに……。兄と接触できる状況にあって、兄が帰れない状況にあるということがわかっているのに、慎重にって何でですか!? 私には、分かりません。慎重に扱わないと……兄が殺されてしまうかもしれない、ということ、ですか!?」
 今はまだ、そこまで緊迫した状態ではない。……そう言って安心させてあげたかったが、それを言ってしまったのなら、自分の知る全てを話すまで、ミコナは納得しないだろう。
 タウラスは黙って、ミコナの激情を受け止めていた。そんなタウラスに縋り付いて、ミコナは泣いた。
「兄を、助けてください……っ」
「……もちろんです」
 タウラスは、それだけ言った。
「……生きていてくれたことだけは……生きてくれたことだけは……本当に、よかった……っ。ごめんなさい……ありがとう、ございます、タウラス、様……」
 ミコナの悲痛な嗚咽を見、タウラスは自分の役目の重さを深く認識するのであった。

 レイニへの報告を終え、タウラスは自室に戻る。
 タウラスは重大な選択を迫られた。
 自分に、どれだけのことが出来るのか――。

 マールがテーブルに顔を伏せて眠っている。
 自分の帰りを待っていたらしい。
 そっと、抱き上げた。
 プラチナブルーの髪が、タウラスの腕にかかり、さらりと、落ちる。
 安らかな寝顔に、眼を細め。
 彼女の部屋へ運ぶ。 

 お休みなさい。マール殿。
 食事は明朝戴きます。

 自室に戻り、ベッドに身を投げ出す――


 忙しいのは幸いだ
 色々と忘れられる
 寝付けぬ時に見ている辞書を、最近では開くこともなく

 ベッドに入れば眠りの渦に引きこまれる
 泥のように――

環境-------------------------------------------
[村周辺]
・東側は崖。崖の下の海に時折遺体が漂着する。体力20もしくは、魔力(風)20あれば、なんとか崖を登ることも可能と思われる。
・その他は深い森。船を泊めた場所さえも、今は分からない。
・南に細い川。河口に原住民の住処。
・南東に果樹園。収穫終了。村の管理下。
[他]
・村から人の降りれる海までの最短ルート(普通の成人男女)→東側の崖沿いを北に進み下山していく。片道1日程度。
・湖の部族の集落から難民村まで(登り)は普通の先住民成人男性で4時間。難民成人男性で5時間程度の距離。崖(高さおよそ30メートル)や大岩の迂回が必要。

世帯内訳---------------------------------------
老夫婦:3組【6人】
老夫婦と子1人:1組【3人】
老夫婦と子2人:1組【4人】
老夫婦と女性と子1人:1組【4人】(船長家)
老男と女性:1組【2人】
夫婦と子:1組【3人】(機関士家)
老女と子1人:5組【10人】(アリン家)
老女と女性と子1人:1組【3人】(ピスカ家)
女性と子1人:13組【26人】(イリー家)
女性と子2人:2組【6人】(中等科教師家)
女性2人と子2人:1組【4人】(ユズ家)
男性と子:2組【4人】(タウラス:マール、フッツ家)
単身老男:1人
単身老女:4人
単身男性:6人(ホラロ、オリン、シャオ、アルファード)
単身女性:4人(レイニ、リィム、花梨)
寮生:14人【単身4人(シオン、バリ、ルルナ)】

計47世帯、寮生14人

老夫婦=夫婦共に60歳以上
老男、老女=60歳以上男女
男性、女性=15歳以上男女
子=15歳未満の子供

公務担当者-------------------------------------
[役場]
レイニ・アルザラ(暫定村長、総統括、議長)
タウラス・ルワール(村長補佐)
フッツ(巡回)
ピスカ(調査・広報)
他(ボランティア)

[交渉団]
タウラス・ルワール(責任者)
フッツ(補佐・護衛)
ピスカ(補佐・記録)

[交易]
橘・花梨(代表) 

[病院]
オリン・ギフト(医師)
イリー(助手・研究生)
他(ボランティア)

[学園]
オリン・ギフト(高等科教師)
イリー(初等科世話係)
他教師1名(中等科担当)、世話係1名

[栽培ハウス]
リィム・フェスタス(責任者)
ホラロ・エラリデン(補佐)
他(ボランティア)

[警備隊]
タウラス・ルワール(総指揮)
他(現場指揮者未定)

[果樹園]
老夫婦

[大工(含む土木、林産等)]
船長(総指揮)
機関士(現場指揮)
他専任6名、ボランティア多数

[飲食]
ユズ(店主)
ミコナ・ケイジ(家事手伝い)
カヨ(家事手伝い)
他1名(調理師)

[魔法学校(準備中)]
ホラロ・エラリデン

民間事業(団体数)-----------------------------
畜産(2)
農産(1)
水産(1)
服飾(2)
工芸(2)
自由業(多)

住民状況---------------------------------------
住民の協調D(改善傾向)
住民同士の信頼D
住民達の結束C(改善傾向)
先住民への感情D(悪化傾向)
村長(及び補佐)への信頼、信用A(依存傾向)

※A←良C悪→E
【生活】現在の衣食住安定度です。
【食料】食料の備蓄値です。
【住居】住居の状態です。
【お金】所持金です。
【収入】今月の収入見込み値です。
【貢献】今月の街への貢献度です。

●未成年学生(46名)-------------------------
「0〜4歳」
男7名
女6名(今月1名誕生)
 
「5〜9歳」
男9名
女7名

「10〜14歳」
男6名
【バリくん】
13歳。寮生。一人暮らし(友人を泊めることが多い)。高等科学級委員。
明るく、勉強も運動も出来る。人望もある。
生活C 食料D 住居B お金D 収入D 貢献D
知識14 体力13 信頼12 魔力1
属性水(学園で習練中)

【シオン・ポウロウニア】
13歳。寮生。
生活C 食料D 住居B お金D 収入D 貢献D

女11名
【ルルナ・ケイジ】
10歳。寮生。一人暮らし。
甘えん坊。バランス良く、それなりに優秀。
外見イメージ:12歳頃の安達祐美。
身長:145cm 体重:36kg
髪:朱色ロング 瞳:茶色
生活C 食料D 住居B お金D 収入D 貢献D
知識11 体力12 信頼5 魔力12
属性火(学園で習練中)

【カヨちゃん】
10歳。ユズおばさんの子供。ミコナに懐いている。
生活B 食料B 住居B お金E 収入E 貢献D

【アリンちゃん】
14歳。祖母と二人暮し。家事をこなし、祖母の仕事の手伝いもしている。
繊細。大切な人に尽くすタイプ。
生活D 食料D 住居C お金E 収入D 貢献D
知識15 体力8 信頼11 魔力6
属性地(学園で習練中)

【マール・ティアウォーター】
14歳。タウラス宅ハウスキーパー。
生活C 食料D 住居B お金D 収入D 貢献D
状態:栄養失調気味

●未成年青年(7名)---------------------------
※ほぼ成人扱い。
・選挙権がある。
・結婚可能。

「15〜19歳」
男3名
【アルファード・セドリック】
17歳。漁師。
生活C 食料B 住居C お金C 収入C 貢献E
状態:軽傷

【フッツ】
19歳。未婚。妹と二人暮し。船員。風魔法使い。交渉団メンバー。老け顔。
冷静沈着。しかし、心は熱い。大人びており、妙に冷めているところもある。
知識7 体力3 信頼6 魔力24
属性風(習練経験有。堪能)

女4名
【ミコナ・ケイジ】
16歳。未婚。魔法学生だった(技術を選考)。食堂の手伝いをしている。
何事にも一生懸命。お人良しなところがある。
外見イメージ:上戸彩を優し気に、気弱にしたような。
身長:158cm 体重:48kg
髪:茶色セミロング 瞳:茶色
生活B 食料B 住居B お金E 収入E 貢献D
知識7 体力3 信頼8 魔力22
属性水(習練経験有。技術は堪能。学術はイマイチ)

【橘・花梨】
18歳。商人。
生活B 食料C 住居C お金B 収入B 貢献B
・先住民との取引が始まりました。

【リィム・フェスタス】<共有食料製造保管管理責任者>
19歳。
生活C 食料D 住居C お金C 収入C 貢献D
・共有食料製造に携わりました(今月の収穫はなし)。

【その他寮生】
生活C 食料D 住居B お金D 収入D 貢献D

●成年(51名)-------------------------------
「20代」
男4名
【タウラス・ルワール】<原住民交渉責任者><暫定村長補佐>
23歳。
生活C 食料D 住居B お金C 収入C 貢献A
状態:疲れ気味
・村長補佐として村の運営に従事しました。
・先住民との交渉を行いました。

【シャオ・フェイティン】
27歳。
生活C 食料D 住居C お金C 収入D 貢献E

【オリン・ギフト】
29歳。教師。医者。
生活C 食料D 住居B お金C 収入C 貢献B
・子供達の教育に携わりました。
・カルテを作りました。

女5名
【イリー】
20歳。未婚。妹と二人暮し。医療補助。看護学生だった。普段は初等科の子供の世話をしている。
優しい。世話焼き。
知識15 体力5 信頼8 魔力12
属性地(習練経験有)

【ピスカ】
22歳。未婚。祖母と弟と三人暮らし。交渉団メンバー。記者。
明るい。行動的。好奇心旺盛。
知識17 体力10 信頼8 魔力5
属性火(習練経験無)

「30代」
男1名
【ホラロ・エラリデン】
37歳。既婚(妻子は洪水の犠牲に)。一人暮らし。魔法学者。
ペドフィル。気まぐれ。
生活C 食料D 住居B お金E 収入E 貢献D
知識5 体力2 信頼1 魔力?
属性地(習練経験有。堪能)

女6名
【レイニ・アルザラ】
33歳。既婚(夫、13年前に死別。子、洪水の犠牲に)。一人暮らし。航海士。暫定村長。
竹を割ったような性格。率先派。
外見イメージ:藤原紀香を強気にしたような。
身長:171cm 体重:58kg
髪:茶色ショート 瞳:茶色
生活C 食料D 住居B お金C 収入C 貢献A
知識10 体力9 信頼20 魔力1
属性風(習練経験無)
状態:疲れ気味
・暫定で村長として村の運営に従事。

【中等科教師】
36歳。既婚(夫は洪水の犠牲に。子2)。港町の教師だった。

「40代」
男1名
【船員:機関士】
43歳。既婚(妻1、子1)。機関士。大工の現場指揮。
真面目。温厚。
状態:重傷

女4名
【ユズおばさん】
42歳。既婚(夫は洪水の犠牲に。子2)。食堂経営。

「50代」
男0名
女6名

「60代以上」
男8名
【船長】
61歳。既婚(妻1、子1、孫1)。大工仕事を指揮している。
明朗。お茶目。年齢問わず、女性にとても優しい。無類の女好き。

女16名
【アリンの祖母】
73歳。既婚(夫、息子夫婦は洪水の犠牲に。孫1)。
服飾の仕事で生計を立てている。

●未登録---------------------------------------
男1名
【ラルバ・ケイジ】
23歳。未婚。行方不明。
髪:茶色ショート 瞳:茶色

☆リィム・フェスタスさん
共有食製造補佐にNPCホラロがつきました。サブアクションで指示を出したり、助言を得ることができます。気まぐれなNPCですので、指示に従わない可能性もあります。
温泉計画を続行される場合は、個人経営か村経営か明記お願いします。個人経営の場合は、必要な人手等はPL交流やアクションで募ることになります。村経営を希望される場合は、まずは会議や村長に温泉計画を詳細明記の上、提案してください。

☆橘・花梨さん
正式な交渉団での交易申し込みの為、公務扱いにいたしました。
今後、個人交易として取引をする場合は、その旨アクションに明記お願いいたします。個人交易の場合は、必要な人手、物資等はPL交流やアクションで募ることになります。

RAリスト(及び条件)
・b3-01:原住民と交渉事を行う
・b3-02:学園で行動
・b3-03:探索に行く(準備をしていかないと、遭難します)
・b3-04:商売をする
・b3-05:村造りに携わる
・b3-06:会議で発言
・b3-07:〜にラブコール!
・b3-08:〜に物申す!
・b3-09:暗躍する

※マスターより
こんにちは、川岸です。
リアでの描写だけでは、表しきれないので、色々資料を増やしてみました〜。
今回の季節は冬(現実カレンダーで11月下旬〜12月中旬くらい)。次回は真冬です。秋の山菜も、もう採れません。
出産や誕生日という理由で、住人の人数、年齢が先月と若干違っています。

状態についてですが、「軽傷」や「〜気味」に関しては通常の生活をしていれば、1ターンで回復いたします。
しかし、無理をすると、継続。無理を重ねると悪化いたします。
状態が行動に悪影響を及ぼす可能性もあります。ご注意ください。

原住民側のリアもどうぞご確認ください。
それでは、また次回!