川岸満里亜
「……で、結局、バリのことはどう思ってるの?」
少女達の会話といえば、恋話。
その日もカフェテラスに、10代後半の少女達が集まり、話に花を咲かせていた。
「なななんで、そこでバリが出ててくるの!?」
リリア・アデレイトは、飲んでいた紅茶を吹き出しそうになる。
明らかに慌てているリリアを、少女達が楽しそうに眺めている。
「噛んでるってば。いや…まあ、ね?」
「バリは、年下だし……私は年上の格好いい、包容力のある人が好みで!」
「あ。あそこの道、バリが女の子と腕組んで歩いてる」
友人の言葉に、がばっと立ち上がるリリア。
「えええっ! 嘘っ、どこどこどこ!?」
「お お う そ ☆」
「………………(怒)。う、うそ、うそ……嘘つきは失恋の始まりだってお母さんに習わなかったのッ!?」
赤くなって、思わず大声を出すリリア。
「それを言うなら、泥棒〜。大丈夫だって、リリアは失恋しないよ」
「し、失恋っていうのは、恋をしている人がするものだから、私はそういうのとは今はまだ無縁だから、するわけないもん!」
「あ、バリ! 腕なんか組んじゃって〜」
「もう、その手には引っかかりません」
ぷいっとリリアが顔を背けたその先に、バリの姿があった。
「ば、ば、バ、バリ!? なんでこんなところに。仕事は!? か、花梨さんも……」
バリは確かに腕を組んでいた。……自分の右手と左手を。
「ちょっと休憩しよ思ってな〜。今日はバリ頑張ったからな、うちの奢りや」
花梨は、バリの肩をぽんと叩いてリリアの隣に座らせる。
……そして、リリアとバリの間に椅子をもってきて、自分も座るのだった。
「花梨さんと、バリって仲いいよねー。付き合ってたりするんですかー」
リリアの友人が聞いた。
花梨とバリが顔を合わせる。
「さてなー」
バリが悪戯っぽい笑みで答えた。
リリアの胸が、ずきんと痛んだ。
「んじゃ、俺も聞いてみようかな……。花梨さんは、俺とリリア、どちらか一人選べっていったら、どちらを選ぶ?」
「そんなん……」
少女達が三人に注目する。その瞳は皆真剣だ。
「両方好きや☆」
花梨はリリアとバリ、二人の腕に、自分の腕を絡める。
「私も花梨さん好き……」
バリも好き。両方好き……なんだけどなぁ。
リリアは複雑な思いだった。
「今日は花梨さん家で、交易仲間を集めて宴会やるんだ。リリアも来るか?」
「是非きてなぁ〜」
ぎゅっとリリアの腕を抱きしめる花梨。
「う、うん、行く!」
リリアはどもりながら頷く。
三人の関係はもうしばらくこのままのようだ。
「リリア、チャンスだからね! 酔っ払ったバリを外に連れ出して、今日こそ言うのよ!」
友人がリリアに囁いた。
「い、い、言うって何をよー!」
思わず立ち上がり、真っ赤になるリリアだった。
おわり☆