アトラ・ハシス

後日談

『再出発』

川岸満里亜

 災厄から、数週間。
 復旧作業は順調に進み、村は活気にあふれていた。
 暖かな春の陽射し、そのものが、人々の心を表しているようであった。
 村は今、一つの話で持ちきりである。
 医者のオリンと、研修生のアリンの婚約だ。
 オリンの婚約には、多くの女性が泣いただろう。
 しかし、日がたてば、誰もが祝福をした。
 この、二人の新たな門出は、村の再出発を祝うものとなるだろう。
 挙式は村の復興祭を兼ねるものとなる。
「新郎さんはー、花摘みに行かなきゃならないのよぅ」
 結婚式を間近に控えたオリンに、ピスカが言った。
「ブーケのお花は、男の人が摘んできて、求婚するものなのよー」
 幅広い知識を持つオリンだが、人間関係に関してはルーズなところがあったため、ピスカがこうして足を運んでは、挙式に関してのアドバイスをしているのだ。
「姐さま達と、探索していた頃に、お花畑っぽいところがあったのねー。場所教えてあげるから、フッツ君とか連れて、行って来てね〜。ついでに、挙式に使う花、全部男性達摘んできてねー」
 アレンジや飾りつけは女性達でやるので、花摘みは全て男性だけの手でやってほしいと、ピスカは言った。その方が、花嫁も喜ぶだろうから、と。
「ああ、ホラロおじ様も言い包めておくね〜。おじ様がいるとー、お花長持ちさせられるし〜」
 リヤカーやスコップに、水筒など、必要なものは全部用意出来ている。あとは、人を集めて出発するだけだ。
 儀式時の暴風雨の影響が気になるが、その場所は社から離れていることもあり、村よりはマシだろう。村の屋外の作物や草花は全滅状態だ。
 ウエディングドレスは、アリンの祖母と、友人のリリアが熱心に縫っていた。
 式場は、食堂か、会議室、保養所が候補に上がっている。本人達の希望がなければ、役場棟会議室になる予定だ。
 アリンは眠れぬ夜を過していた。
 喜びと恥かしさで、おかしくなりそうだった。
 どうしても眠れない夜は、祖母の布団に潜り込んで、目をつぶるのだった。

 災厄前に、リィム・フェスタスの指揮の下、収穫を行い、保管庫を設けてあったため、食料に問題はなかった。
 小麦の収穫も順調である。
 山に入れば、山菜を採ることもできた。
 果樹園は酷い有様であったが、老夫婦とセルジオ・ラーゲルレーヴが精力的に復旧作業を続けている。
 先住民との交流は行われていないが、橘・花梨を代表とする、交易は続けられている。各々必要なものを物々交換している状況だ。村人も、交流を望まないとはいえ、酷く憎んでいるわけではない。深く関わりたくはないが、人道支援の気持ちは、難民村の人々にも、ある。不足した分野において、交易で助け合うことに対しての反対意見はなかった。
 ただ、先住民の姿に怯える人もいるため、今はまだ、ホームステイなどを考慮できる状態ではないようだ。
 寮生達は、学園棟の修繕のほか、役場棟の修繕も手伝っている。その中心には、寮監となった、リリア・アデレイトの姿がある。
 役場の庶務全般はフレデリカ・ステイシーが担っている。村長の代わりに意見や要望の取りまとめなども、行っている。村長と面会せずとも、彼女の適切な対応だけで、済む用件が多いようだ。
 レイニ・アルザラは相変わらず忙しい。ただ、補佐のタウラス・ルワールと、共に担っているため、負担は殆ど感じていないようだ。忙しい理由も、職責で忙しかった以前とは違い、有り余る行動力と、自らの夢を実現するために、忙しなく動き回っていることが原因なのだ。
 オリン・ギフトの区画整理案についても順調に話し合われており、挙式が済んだ後には、散水塔工事の再開その他、大掛かりな計画が実行に移されることだろう。

<村人の状況>
●レイニ・アルザラ
仕事と精神的負担は、タウラスと緩和しあっている。
秘書業務、庶務全般はフレデリカに任せている。また、復旧、村開発計画についてはオリンを頼っているため、負担が随分と減った。
最近では、タウラスと共に村を巡回し、皆を手伝う姿が良く見られる。巡回の名目でこっそり村を抜け出して探索に出ていることもあるようだ。
近頃の楽しみといえば、採ってきた山菜を使った夕食を、タウラスとフレデリカにご馳走すること。
式後には護衛を連れ、テントを背負って下山し、タウラスと共に、開拓に適した場所を探し回る予定。
「数日くらい留守にしても大丈夫でしょ? 今までは、自ら村に縛られてた気もするの。これからは、私らしい村長でいるわ!」

●ラルバ・ケイジ
警備隊の統括を任されるが、何をすればよいのか分らず、護衛という名目でレイニに付き従っていることが多い。昼間はレイニに、夕方以降や余暇はルルナに振り回される日々。
夕食は食堂で兄妹3人で食べている。
たまに護衛として花梨に付き添い、湖の集落を訪れているようだ。
多少狩りの知識があるので、式後には、隊を率いて狩りに出る予定。
「レイニさん、そっちは崖ッ! ああ、ルルナッ、そこは泥濘が!」

●ミコナ・ケイジ
拒絶するのではなく、本当の家族として、ユズに受け入れてもらえないかという考えを持ち始めた。
自分は良いように使われているのだという自覚があり、そういう気持ちが、ユズと分かり合えなかった理由だろうと考え、母親と思い、ユズを愛してみようと努力中。
散水塔の管理人を進められたこともあり、公務に興味を持ち、会議にも参加するようになった。
「自分のやりたいことをきちんと話して、認めてもらえたらと思うの……」

●ルルナ・ケイジ
学園が終ると、兄の元に駆けつけ、警備と武術の勉強に励んでいる。
積極的に村を守ろうという姿勢が村人達に認められてきたところ。
「ルルナが皆を守ってあげるからね! ……皆がルルナを守ってくれたように」

●ホラロ・エラリデン
魔法薬の研究に励んでいる。
再び訪れる魔力調整時期に備えた研究も始めなければならないが、情報が揃わないので、指示がなければ、このまま魔法薬の研究を続ける予定。
「食堂の食事には飽きましたねぇ。食事や身の回りの世話をしてくれる可愛い女性はいませんかね〜」

●フッツ
実質、警備隊を取り仕切っている。
警邏ついでに、木の枝で昼寝が日課。
「サボってませんよ。ここからですと、村が一望できますので……Zzzzz」

●ピスカ
村長の手伝い(たまに邪魔)の他、スクープを探し回っている。
アリンの結婚を物凄くうらやんでいる。自分もいい人を見つけたいと思っているが……。

●アリン
花嫁さん☆
どーしよう、どぉぉぉしよう。が最近の口癖。

※マスターより
 こんにちは、川岸です。
 オリンさんに特別プランがなければ、村主催で挙式は行わせていただきますー。
 その他の皆様も、二次会、三次会、密会(!?)など、プランがありましたら、ご提案ください。
 時期は最終回から数週間後です。先住民との関係については、本文と最終回リアの通りですので、挙式関係に参加できるのは、難民PCのみになります。
 難民村で主に行動する方は、その後の行動については、サブアクション欄にご記入ください。文字制限、行動数制限はありません。
 メインアクション欄には、シーン描写を望む行動について、詳しくお書きください。こちらも文字制限はありませんが、1シーン限定でお願いします。例えば、友人PCと食事を楽しむのであれば、食事のシーンだけのアクションでお願いします。その友人との関係や、日常的に遊んだりしているというその後行動は、サブアクション欄にご記入お願いいたします。
 メインアクション欄に記入された行動に関しては、個別リアクションになる可能性もあります。
 サブアクション欄の行動に関しては、殆どが通常リアでPCのその後行動として軽く表される程度になります。この行動により、数年後の村や島の状態が変わることでしょう。