川岸満里亜
閃光が走った
爆発音が轟いた
悲鳴が上がる
窓に近づき外を見る
「雷が家に落ちた!!」
泣き出した幼子
我が子を抱きしめて、うずくまる母親
部屋の隅で震える子供――
少女は、おもむろに、立ち上がった
周囲を見回して、一人の少年に目を止める
「そんな偶然度々起こんねぇって!」
少し強がって、頭の裏で腕を組んでいる少年に
「こっち、任せちゃっても平気よね? 学級委員長で男だもんね、バリは」
微笑みかけて
彼の手を取った
「私、たぶん今行かなきゃ後悔すると思うから。行ってくる。応援してて?」
小刻みに、少女の手は震えていた
「な、なんだよっ」
少年は、驚いたように、少女の手を振り払った
「フェネアちゃんは小さい子をお願い!」
友達になったばかりの女の子が頷くのを確認して
少女は、走り出した――
* * *
「リリア・アデレイトです! 今の爆発は何ですか!?」
ノックをしながらドアを開け放つ。会議室の隣、応接室に村長及び、公務に携わる人物達が集まっていることは、知っていた。
「リリア殿、会議室の様子は?」
久しぶりに目にする、タウラス・ルワールの姿があった。フレデリカ・ステイシーに支えられた、そのやつれた様が、リリアの心に更なる不安を湧き上がらせた。
「みんな、驚いています。雷だと思っているようですけれど……。私には分ります! 何か、とてつもない力が近づいてきていることが!」
「情報の分析が先決だろう。フッツ君、もう一度説明してくれるか」
オリン・ギフトがフッツに説明を求める。
叩き付ける雨音が、会話の妨げとなる。
吹き荒れる風は建物を軋ませ、不安を煽る。
皆、心を抑えることに、必死だった。
フッツはもう一度、皆に話して聞かせる。
異形の生物が、村に近付いている……いや、既に村に到着しているであろうことを。
付き従う仮面の人物はおよそ10名。
率いる異形の生物の姿を、より詳しく話す。
刃物と化した左腕の説明に入った時点で、タウラス・ルワールが止める。
「儀式を乗っ取ろうとした結果であるのなら、それは祭具ではないでしょうか? 儀式に使われる不思議な力を秘めた呪具……おそらくは、短刀。それが媒介になり、彼の身体に異変を起しているとは考えられませんか?」
「ああ、状況からして、それが祭具である可能性は高いだろう。儀式で魔力エネルギーを大量に体内に取り込み、その結果として異形と化したというのなら、ここにやってきた目的は……」
一呼吸置いて、オリンは続ける。
「魔力制御装置。魔力は得たが、制御は出来ていないということだ。しかし、今は制御装置は存在しない。
体内に取り込んだ魔力がいつ暴走するとも限らない。厳しい状況だな……」
「確かに、以前、制御装置をお見せしたことがあります。不用意なことをしました。申し訳ありません」
タウラスが皆に謝罪をする。
その顔色は青白く、声には張りがない。立っているだけで精一杯な彼の身体状況が一目瞭然に分かる。
「制御を焦るほどの状態なら、村から遠ざけることを考えなくては……」
バン!
再び、ドアが勢いよく開かれる。
「テセラさんが説得に行いった。一人ではいかせられない。俺も後を追おうと思う。武器と、戦闘配備を!」
レイニ・アルザラの姿を見つけ、彼女に詰め寄る。ラルバ・ケイジであった。
「先ほどの爆発は、族長の仕業だ。テセラさんが狙われた。それなのに……無茶を!」
テセラ・ナ・ウィルトは、湖の集落で人々の調整、交渉補佐している人物だ。その彼女を狙うということは……。
「既に、人の心を失っているということかしら。ラルバ、私もここの長として、交渉に出るわ。あなたは、ここで戦闘体制を整えて。ウィルトさんも、ここにいる湖の部族の子供達の保護者として、そして、向うの取りまとめ役としての、覚悟と責任を持っての行動でしょうから。あなたは、あなたの責務を果たしなさい」
「っ……彼女にも、同じようなことを言われました。しかし……」
「彼女は、私が追うから。私とウィルトさんで、族長の気を引いてみるわ。皆はここで引き続き対策を練って、タウラスの指揮の下、配備を整えて!」
一人。
レイニ・アルザラが応接室から出ようとする。
途端に、皆の心に更なる不安が渦巻く。
彼女には……いや、誰にも、あの異形の族長に対抗する力などないのは、わかっている。
彼女の声は、時に厳しく、力強い。その茶色の瞳もまた。
きっと、なんとかしてくれると。
絶対、大丈夫だと。
そう、思い込ませてくれる、力がある。
だからこそ、皆の傍にいなければいけない存在だというのに。
だからこそ、率先して危険の中に突き進まなければならない存在でもある。
早足でドアに近付き、手をかけたレイニの……反対の腕を掴む者がいた。
「あなたも、俺をおいていってしまうんですか?」
不安げに自分を見る瞳に、レイニは戸惑った。
「タウラス……?」
手を引こうとするが、掴んだ手首を、彼は放そうとしない。
「一緒に、行きます」
「な、何を言っているの!? 動ける私が交渉に出て、動けないあなたはここに残って指揮を取る。当然のことでしょ?」
突然のタウラスの態度が、レイニを混乱させた。
不安そうに向けられた瞳は、いつもの彼のものではない。
かつて、彼がそのような感情を表したことは、なかった。
「以前、保険と言ったのは、あの時はそのような関係が村にとって最良だと思いました……でも、今は……」
いつかは離れるつもりであった村は、既にタウラスにとって捨てきれないものになっていた。
「今も、あなたのおっしゃることが最良だと思います。ですが……俺にとってはそうじゃない。共にありたい人の手を放すわけにいかない。もう守れないのも、見失うのも嫌だから」
だから。
自分も、共に行くと。
タウラスは、レイニの腕を放さなかった。
「……そ、んな身体で何を言ってるの。一人で歩くこともままならないくせに」
揺れているのが分かった。
交渉に行くと強く言い切った彼女が、タウラスの言葉と態度に、揺れているのが、見て取れた。
「時間がないの。タウラス、放して」
手を放さず、タウラスは首を左右に振る。
「あ、あの。私、体力を回復させる薬、持ってます。魔法鉱石でホラロさんが作ってくれた魔法薬です。これならタウラスさんの体力も回復させることができるのではないでしょうか?」
リィム・フェスタスはホラロに視線を送り、確認をとる。
「そうですね。低下している体力だけなら、回復させることも可能でしょう」
ホラロの言葉を聞いたリィムは、ポーチから小瓶を取り出して、タウラスに差し出した。
感謝の言葉を述べて、タウラスは小瓶を受け取ると、躊躇することなく、一気に飲み干す。
そして、強く。更に強くレイニの手首を握る。
「交渉に行かれるというのなら、私も行きます。あなた一人では行かせません」
「……私は、あなたをもう、危険な目には……」
言いかけた言葉を途中で止めて、レイニは少しの間沈黙した。
そして「わかった」と言ったのだった。
「一緒に行こう、タウラス」
「いや、それはダメだ」
間髪いれずオリン・ギフトが口を挟む。
「タウラスさんが交渉に出るのなら、レイニさんはここに残るべきだ。今の族長は交渉中であれ、攻撃を仕掛けてくるだろう。戦闘と指揮をとれるものが役場棟に残らなければならない。タウラスさんの体力が回復したのなら、話術はタウラスさんが上、指揮、統率はレイニさんが上なのだから、自ずと互いの役割は分かるはずだ」
「……オリンの言っていることは、全面的に正しい。私もそう思う。村の為にそうすべきだと思う。……だけど、タウラスは私の補佐だから!」
強く。雨の勢いに負けないほど強く、レイニは皆に向けて言い放った。
「交渉に行くのは、あくまで、村の代表の私。だから補佐の彼が、私が本当に大変なときに、傍で私をサポートしてくれるのは、当然だと思ってる。私は最初から、二人の関係が保険だなんて思っていない! 端から右腕……彼を自分の身体の一部だと思っていた。
私達はあの広い大陸の、たった100人の生き残りよ。先導をしたのは私だけれど、風を操ったのも、水を抑えたのも、私ではない。皆で協力して、励ましあいながら、ここまで生きてきた、たった100人の仲間だというのに! 主義、主張は皆違って、自己保身の為に我が侭ばかり言う人も多いけれど。誰もが自分の幸せを掴みたいだけ。誰も、他人の不幸を望んではいない。私達は私達がいないと生きてはいけない、小さな集まりだというのに。人を失う悲しみを等しく知っている私達が、互いを信頼しない理由がどこにある!?」
続きは、タウラスに。
タウラスを見つめて、言った。
「大切な人達の中で、私の補佐をしたいと申し出たあなたを、全面的に信頼しない理由がどこにあるのよ。一番に大切に思わない理由が何処にある!? 申し出た理由なんて関係ない。僅か100人の大切な仲間の中で、更に私に協力をしようと名乗り出たその時点で、あなたは私の中で、唯一無二の私の相棒になったのよ。それを……信頼されているなんて思わなかったなんて、よくも言ってくれたわね」
軽くタウラスを小突いて、レイニはドアを開けた。
「急いで、着替えて用意をして。あなたが戻ってくるまで、ここで待ってるから。一緒に行こう、タウラス」
いつか、ピスカが言っていた言葉を思い出す。
レイニは仲間と思った人を、とてもとても凄く大切にする人だと。
この島に辿りついた時点で……いや、船に乗り合わせた時点で、既に自分達は信頼すべき大切な仲間と位置づけられていたのだろう。
「指揮が必要だというのなら、指示を出してからいくわ。現場の指揮は担当人物に任せる。取りまとめはフレデリカがやって。後に私に報告を」
「……わかりました」
フレデリカは承諾する。釘を刺す必要はないようだ。「どちらかが…」や、「もしもの時」といった、レイニの先の発言に、苛立ちと……悲しみを覚えていたけれど……。
レイニさんは、帰ってくる気でいる。大丈夫だ。やれる!
「では、僭越ですが、村長代理として皆の報告を受けさせていただきます」
フレデリカがしっかりとした口調で言った。
「私は役場棟に罠を張ろう。あとは……左腕切り落としに関して、策がある」
レイニを止めることを諦めたのか、オリンが提案を始める。
「具体案は後にするが、ラルバ君の協力が必要不可欠だ。水魔法堪能者の協力も得られるといいんだが」
「わかったわ。……ラルバとフッツはオリンの指示に従って防衛及び、攻撃をお願い。
ピスカ、まだ避難をしていない人は誰?」
レイニの言葉を受け、ピスカが未避難者5名の名前をあげる。
うち、子供3名は寮にいると思われる。残りの2名は家にいなかった為、家族は手紙を残し、先に避難したとのことだ……。
「私、捜しに行きます」
「うちも!」
リィムと橘・花梨が申し出る。
「じゃあ、リィムはピスカと共に、寮にいると思われる子供の部屋を訪ねて。花梨は会議室で仲間を募ってから村をまわってちょうだい。決して彼等に見つからないように。何かの際は逃げることを第一に考えて」
「わかりました」
二人は顔をあわせて頷きあった後、ドアへと向う。
「あ、ホラロさん、この間発掘した、鉱石ですけれど、持っていれば多少、魔力を増強することできますか?」
振り向いてリィムはホラロに問う。
「持っているだけでは効果はありませんねー。摂取すれば、一時的に魔力を増幅することくらい可能でしょうけれど、原石をそのまま摂取したら、身体が持たないでしょう。こういう事態に陥ると知っていれば、魔力増幅薬も作っておいたんですけれどね……」
「そうですか……」
魔力増幅は諦めて、ピスカと共に、リィムは寮に向うことにする。
レイニの脇を通り過ぎざま、リィムは微笑んでレイニにこう言葉を残した。
「村人を守ろうとする事は良い事ですけれど、自分自身も守ってくださいね。レイニさんも村人の一人なんですから」
少し、驚いたように、レイニはリィムを見た。
「確かに、言われてみれば当然なことなんだけれど、そんな風に言ってくれたのは、あなたが始めてよ。ありがとう、リィム。私にだって、やりたいことも、夢もある。だから、こんなところで無駄死にするつもりは、毛頭ないのよ。本当にそう思ってる」
「約束してね、姐様」
ピスカは再びレイニに抱きつく。
「全て終わったら、いい記事書いてね、ピスカ」
軽く抱きしめ返して、ピスカを離して、その背を押す。
ピスカは、不安気に振り返った後、リィムと一緒に応接室を出て行った。
「セルジオはホラロの指示の元、防衛に備えていて。ミコナとリリアはサポートしてくれるのよね?」
リリアが決意を秘めた瞳で、頷く。
「私は、お兄ちゃん達のサポートをします」
ミコナ・ケイジは繋いでいたセルジオ・ラーゲルレーヴの手を離した。セルジオの目を見つめて、少しだけ、笑みをみせた。
「私も、頑張るね。魔力防衛の担当者として選ばれなれなかったけれど……私も出来ることをしなきゃ」
それでも少し震えている彼女は、果敢なく、とても心配ではあったが……そして、自分の傍にいて欲しくもあったのだが、セルジオはミコナを止めなかった。彼女、自身の為に。
タウラス・ルワールが戻る。
普段着に、髪を後ろで束ねた姿。……少し痩せてはいたが、いつもの彼の姿だった。
違うのは、腰にレイピアを携えていること。武器庫から持ってきたのだろう。
「僕も一緒に行かせてください!」
タウラスの後ろからルビイ・サ・フレスが姿を現す。見舞いにタウラスの病室を訪れたルビイは、タウラスから掻い摘んだ状況の説明を受けていた。
「確か……ホームステイ発案者のルビイさんよね? あなたを連れていくことはできないわ」
「ルビイはオントと縁のある人物です。オントの家族のようなもの……だから、知る権利はある」
言ったのはラルバだった。
「……でも、いいとはいえないわ。私には、あなたを守る責任がある。だけれど、あなたがあなたの保護者に会いに行くことを止める権利はないわ、ね」
レイニの言葉は、黙認の意を示していた。
その間、タウラスは、オリンとの間で、軽く作戦を話し合い、2、3部下に指示を出して回る。
レイニは指示を続ける。
「村の皆は決して外には出さないように。説明は……」
「した方がいいと思います」
セルジオが言った。
「何も知らずに、不意に今の状況を知るようなことがあれば、知らせた時よりも混乱するかと思います」
対して、オリンの意見はこうだった。
「いや、言わない方がいいだろう。これは、村人間だけの問題に留まらない。今の村人達には重すぎる事実だ。言えば、コツコツ築いてきた先住民との関係をぶち壊し決して埋めることのできない溝を残してしまうだろう。今は言わずにおくべきだ」
「……説明は、しない方がいいと、私は思う」
レイニの意見はオリンとほぼ同じであった。
「今は余計な混乱を起すようなことは避けるべきだと思うわ。だけれど、ある程度の説明は必要だから。その程度については、残っている人達に任せる。真に皆のことを考えて、状況を見て、判断をしてちょうだい」
「必要性を感じればお任せします。ですが、異形の生物が族長であることは伏せておいてください。……その告白は、戻ってから俺がする仕事だから」
最後は重い声で。自分にも語りかけるように、タウラスが言った。
「では……少しの間、ここは皆に任せるわね」
レイニはドアを開ける。
「行こうか、タウラス」
「はい」
タウラスはレイニに近付き、自然に腰に手を添えて、エスコートする。
「作戦の目的は誰も欠けないことです。自分の命を一番に考えてください」
タウラスは、応接室に、そう言葉を残した。
少し、距離を置いて、ルビイがその後に続く。部屋を出る前に、真剣な面持ちで皆にぺこりと挨拶をして。
「――では、私達も行きましょう!」
不安に駆られる間を作らないよう、フレデリカが歩き出す。
「僕は会議室に行きます。皆も不安がっていると思いますので」
「私も!」
セルジオとリリアは会議室に向かう。ホラロも2人に続いた。
「詳しい説明は、歩きながらしよう」
オリンも、フッツ、ラルバ、ミコナを連れて応接室を出る。
それぞれが、それぞれの分野に動き出す――。
橘・花梨は、会議室で仕事仲間――レザンとシランに声をかけ、裏口から外へ出た。
激しい雨に、視界がさえぎられる。
強風で身体さえ、浮き上がりそうだ。花梨はレザンの服にしがみついた。
近くの家から、まわっていく。
「おばあちゃん、ケイトおばあちゃん!」
行方不明の老婆の名を呼ぶ。積極的に交流していた花梨は……とくに、年寄りが立ち寄る場所は誰よりも把握していた。
ケイトおばあちゃんは、雨の日でも、風の日でも、健康の為って、散歩に出るんや。
散歩の後は、かならず昼寝をするんや!
戻っていれば、家におるはず。
「おばあちゃん、おばあちゃん!」
声を上げながら、部屋を探す。
ニ部屋しかない、小さな家……。すぐに老婆は見つかった。
「おばあちゃん、寝てる場合じゃないんよ!」
近づいてみる。安らかな顔。寝息を立てている。
ああ、本当に眠っているだけだ。
耳が遠いから、爆発音でも目が覚めなかったのだろう。
安堵しながら、揺すって起こす。
「花梨ちゃん、まあ、けったいな。ずぶ濡れじゃないの。早く拭かんと……」
「おばあちゃん、うちのことはええから。早く役場棟に行ってな」
花梨はシランにケイトを背負って役場棟に連れていくようお願いをし、レザンと共に、次の家に移動をする。
周囲が光る。
またしても爆音。
……怖い……
震えは寒さのせいなのか。
顔が濡れているのは、雨のせいかのか。
わからない。
ただ、必死に。
次の家を目指す。
「アヤリおばあちゃん!」
もう一人の行方不明の老婆の名を呼ぶ。
花梨のところに、交易の手伝いがしたいと申し出た老婆だ。
雇うことは出来なかったけれど、個人的に巾着を作ってもらったり、裁縫を教えてもらったり……そんな交わりが続いていた。
家にはいなかった。
彼女が行きそうな場所、家をまわる。
いない、いない。どこ……。
不安に駆られそうになる。
アヤリは決して身体が丈夫な方ではない。
最近は腰痛が酷いと漏らしていた。
昼間一人で寂しいけれど、花梨がたまに来てくれるから。
だから、自分は幸せだと、そう言ってくれていた。
顔の雨を拭う。
そう、これは雨。
自分は泣いてはいない。もうすぐアヤリの笑顔に会えるはずだから……。
「あ、栽培ハウス……!」
そういえば、アヤリはリィムの手伝いを定期的にしているのだった。
まさかと思いつつ、栽培ハウスの方へ向かう。
屋根の一部がはがれ、雨が入り込んでいた。まだ損傷はあまり酷くなく、食物は無事のようだ。
「アヤリおばあちゃん! アヤリおばあちゃん!」
名を呼んでみる。返事はない。
「おい、あそこに!」
レザンが何かに気付く。
ハウスの奥。小麦の辺りに、倒れている人の姿があった。
「おばあちゃん!!」
花梨は駆け寄った。
倒れていたのは、予想通りアヤリだった。ぐったりとして動かない。
ハウスの中にある台車を持って、レザンが側による。
「おばあちゃん、しっかりしてな。どうしてこんなところに……」
答えを聞かなくてもわかる。
何かをしようと必死だったのだ。こんな時だからこそ。
自分の存在意義を探して。
自分に出来ることを探して。
生きる、ために。
そうして、彼女はいつも必死に。必死に生きていたのを、花梨は知っている。
レザンが台車を引き、花梨が押す。吹き付ける風と雨から、アヤリを庇うように。
「ちょっとだけ、我慢してな、おばあちゃん。また巾着作ってな……」
今を越せば必ず。
また、必ず訪れる。
彼女と、皆と、笑い合える日々が。
女二人、身を寄せ合いながら、隣の棟へと歩みを進める。
強風で思うように歩けない。
時折飛んでくる瓦礫に冷や汗がでる。
「リィムちゃん、リィムちゃん」
ピスカがリィムの名前をしきりに呼ぶ。振り返ることさえ困難だ。
大きな声で、なに?と叫ぶ。
「姐様達、大丈夫かな……」
自分より年上の彼女が、不安気に同じ言葉を繰り返してる。
ピスカはよく、レイニに張り付いている。
多分、彼女の元気の源は、レイニなのだろう。
安心できる存在がいることが、人を笑顔にする。
「大丈夫ですよ! レイニさんは強いですから!」
声を張り上げながら、学園棟に着く。役場棟のすぐ隣なのだが、激しい雨で既にずぶ濡れになってしまっていた。
「ええっと、12号室でしたよね」
ピスカと共に、ネームプレートを確認しながら、12号室にたどり着く。
ドンドンドンドン!
風に負けぬよう、強く叩く。
「誰かいる!? 役場棟に非難しなきゃだめですよ!」
雨の音にかき消され、室内の音は聞こえない。
もう一度。ドアを叩こうとした瞬間。
閃光と爆音が響いた。
「きゃあああああああっ」
ピスカがリィムに、リィムもピスカに抱きつく。
魔力の波動が痛いほど身体に響く。
恐怖が体中に渦巻いてゆく。
怖い……からこそ、助けなきゃ……!
ドアを叩く。
「いるんでしょ? 早く出てきなさい。ここは危険だから、皆のところに行きましょう!!」
……しばらくして、少年が姿を現す。
「役場棟だって、ここと同じつくりなんだから、どっちにいたって平気じゃんかよ〜」
生意気そうな男の子だ。
「同じじゃありません。役場棟は魔法の力で守られてるんです。だから、避難しなきゃダメです。3人共、ここにいるんですよね?」
覗きこむと、男の子の後ろに、もう二人男の子の姿が見える。
「雷の中、外に出るの怖い。ここにいるー」
臆病そうな男の子がそう言った。
「……あれは、雷じゃありません。魔法の攻撃です。この建物も壊されてしまうかもしれないの! だから行くのよ!!」
最後は、有無を言わさない口調で、リィムは部屋に押し入り、男の子たちを押して、外に出した。
「玩具持っていく〜」
「そんな場合じゃないのっ!!」
ピスカが戻ろうとする男の子の手を引いて、どうにか3人を連れ、外に飛び出した。
雨が5人の身体を打ち付ける。
風と瓦礫から子供達を守るように、ピスカとリィムは子供を覆いながら、役場棟へと急ぐ。
「人がいるぞ!!」
かすかに、声が届いた。
振り向いた先に……仮面の姿があった。
恐怖で身体が凍りつきそうになる。
子供達を……守らないと!
「走って!!」
勇気を奮い立たせ、子供達を役場棟に走らせ、その後にピスカとリィムが続く。
来る! 仮面が3人。
仮面の一人が手を振り上げる。
リィムは立ち止まり、集中をする。
飛び道具が投げられると同時に、リィムの魔法が発動し、地が崩れる。
放たれた刃物は、リィムの頬を掠め、子供を庇うピスカの背に触れ、落ちた。
強風のお陰で、大した威力ではなかった。
仮面達は足場を崩され、もがいている。リィムは更に魔法を発動し、彼等の足を地中に埋める。
ピスカは、子供達を追い立て、役場棟に押し入れる。
続いて、ピスカが、最後にリィムが役場棟に雪崩れ込む。
「た、助かりました……。あなた達は早く会議室へ行きなさい!」
子供達に会議室に行くように命じた後、リィムはピスカに視線を移す。
ピスカは半泣き顔だった。背中が浅く切られ、血が服に滲んでいる。治療をしようとリィムが手を伸ばすと同時に、ピスカがリィムの頬に触れた。
「リィムちゃん、顔……早く治療しないと、傷残っちゃうよぉ!」
肩で息をしながら、二人、いつの間にか手を繋ぎ、報告と治療に応接室に向った。
会議室に、フレデリカの先導で忙しなく病人と薬が運び込まれていた。
先ほどまでは、気分が悪くなった人を病室に運んでいたのだが、何故か全員会議室に戻されるという状況に、集まっていた住民の不安は増していく。
住民達の中にも、魔力の高いものはいる。
言いようもない不安に襲われ、何かをまくし立てている人もいる。何も知らない彼等には、何が起きているのか、どんな状況なのか、全く分からないのだ。
事情を知っているセルジオやリリアは、皆が会議室から出ないよう誘導しようとするのだが、子供扱いをされ、言葉を聞いてはもらえない。レイニやタウラスの名を呼びながら捜しに出ようとする者もいた。
やっぱり。話すべきですよね……。
セルジオは意を決す。
魔力増幅装置をリリアに預け、もしもの時の対処を頼むと、皆に、向き直る。
「皆さん、集まってください。全員会議室に揃ったら、鍵を閉めて、机や椅子でバリケードを築くんです!」
突然、張り上げられた声に、皆が注目をする。
「今、島の儀式の失敗により、異形の者が村に近付いてきています」
セルジオの言葉に、皆、怪訝な顔をするばかりであった。
しかし、魔力の高いものは違う。
「異形の者って!? 儀式って何よ!!」
そう、儀式が何かさえ、村人には知らされてないのだ。
村人の知識といえば、知っている人でさえ、先住民が、神に人間を生贄に差し出すという野蛮な儀式を行っている……その程度の認識だ。
「儀式というのは、島の魔力を調整するものだと聞いています」
セルジオは、魔力防衛の説明を受けた際に聞いた話を、村人達に話して聞かせる。
「島の方々は、20年に一度、儀式を行うことで、この島を守ってきたのです。その儀式が失敗をし、膨大なエネルギーを持った異形の者が出来てしまい、それが、今、こちらに向っているということです」
会議室がざわめき立つ。
「それは……向うが魔力エネルギーに干渉し、怪物を作り出したってことでしょ? その怪物がなんで、こっちに来るのよ!?」
「つまり、攻め落とそうとしてるんだろ、この村を!」
「失敗なんて嘘よ、最初からそれが目的だったんでしょ!」
「違います!」
間違った方向へ進みそうな会話を遮り、セルジオは説明を重ねる。
「儀式は本当に島を守るためのものなのです。けれども、その儀式で、力を得ようともくろんだ人がいるようなのです。その人物が中途半端に魔力を吸収したために、制御が出来ない状態になり、制御する術を求めて、この村に下りてきたようなのです。先住民の方々の総意では決してありません!」
「嘘……よ」
立ち上がり、セルジオを睨んだ女性がいた。
機関士の妻だ。引きつった顔。憎悪が籠められた瞳で、彼女は周囲を見た。
「きっと、私達、生贄にされるのよ! ずっとおかしいと思ってた。何故、人を生贄に捧げる民族なんかと、共存しようとなんかするのか。人を捧げるなんておかしいと大陸の民なら誰でもわかる。それなのに、儀式に反対するどころか、向うとの友好関係ばかり気にして、私達は私達だけで十分生きていけるというのに、何度も向うの顔色を伺うように交渉に向って……。私の……こちらの意見なんか、聞いてもくれない! 一方的に被害にあってるのに、謝罪さえ受けていない。説明さえ、ちゃんと受けていないわ! 旦那を襲った犯人はどうしたのよ! 問題は解決したんじゃいの!? 蔑ろにするのもいい加減にしてよ!!」
止めようとするセルジオの声を遮り、彼女は吐き捨てる。
「つまり……タウラスは向うについたのよ。向うの甘言に乗って、私達を生贄にしようとしてるのよ。一箇所に皆を集めて、怪物の餌にしようとね! レイニは彼に騙されているのよ!!」
彼女の迫力に、泣き出す子供がいた。
大人たちも恐怖に怯え、親しい者と身を寄せ合う。
「逃げよう、逃げようっ! どちらにせよ、ここにいなきゃいいってことじゃないか! 怪物が襲ってくるのに、この場所に留まってろっていうのは変だ!!」
「そうよ、村から出ましょう。保養所だってあるし……先住民が敵ではないっていうのなら、あっちの集落に避難させてもらえばいいだけじゃない! ここに集まってる理由なんかないわよ!! 集まっていろっていうのが変よ!!」
「待ってください! 怪物だけではないのです。ここから出るのは危険ですっ!!」
セルジオは声を張り上げて叫ぶが、既に混乱の極みにある村人達に、声は届かない。
閃光が走る。再び爆音が響いた。
悲鳴があがり、村人達が次々にドアへと殺到する。
掻き分け、押しのけ、飛ばされ、倒れ……。
「うわああああっ!」
真っ先にドアから飛び出した男性が、尻餅をつく。頬に赤い筋が走る。
役場棟入り口に、仮面の男の姿がある。カマイタチを放ってきたらしい。
「誰か! 警備隊はどうしたの!!」
「レイニはどこ!?」
「レイニは、どこよ! タウラスはどこ!? こんな時に何してるのよ!!」
女性達が叫ぶ。
「生贄が必要なら、この子達を差し出せばいい!」
機関士の妻が……ホームステイに訪れていた、子供の一人の手をとった。
「それとも、この村が目的なら、この子達を人質にすればいいわ!!」
叫んだ途端。
鈍い音が響き、機関士の妻が倒れた。
「互いの関係はまだ不安定で。不安要素がある場所へ、勇気を持って来てくれた子供達が……この子達こそ、一番不安を抱えているというのに。よりにもよってその人間に当たるなんて恥を知れ!!」
フレデリカが拳を固めていた。
「今から、私達の為に、命を賭して異形の者の元に向った、村長の言葉を伝える! 耳の穴かっぽじってよく聞けッ!!」
会議室……いや、役場棟全体に響き渡る、絶叫とも言える声で、フレデリカは続ける。
私達はあの広い大陸の、たった100人の生き残りだ!
先導をしたのはレイニだけれど、風を操ったのも、水を抑えたのも、レイニではない!
皆で協力して、励ましあいながら、ここまで生きてきた、たった100人の仲間だ!
主義、主張は皆違って、自己保身の為に我が侭ばかり言う奴も多いけれど
誰もが自分の幸せを掴みたいだけ
誰も、他人の不幸を望んではいない!
私達は私達がいないと生きてはいけない、本当に小さな集まりだとういのに!
人を失う悲しみを等しく知っている私達が、互 い を 信 頼 し な い 理 由 が ど こ に あ る ッ !?
身体中の力を込めて、フレデリカは一気に言った。
荒い呼吸を繰り返す。
場が、静まり返っていた……。
続きは、セルジオが。
「レイニさんとタウラスさんは、命を賭けて彼等と対峙しています。僕らは何ができますか!? 何も出来ないなんてことはないはずです。
さあ、皆さん、会議室に戻ってください! 魔法を使える人は、前に出て戦闘に備えてください! 武術の嗜みのある人は、椅子をばらしてでもいい、武器になるものを持ってください! 力のある人は、机や椅子を動かしてバリケードを作り、応急処置を知っている方は、病人の看護を! 幼子がいる人は、子供を抱きしめてあげてください。少しでも自分達が生き残るために、自分達で明日を掴むために、協力してください! 僕達は、仲間ですから!」
ガダン!
木の机を叩き割る男がいた。
「そうだったな。……船の舵を取ったのは私だ」
操縦士だった。折れた机の足を取り上げる。
「レイニちゃん、また無茶しよってからに」
ため息交じりに言いながら、船長も折れた机から木の棒を得る。
「タウラス様、私は疑ってなんかいないから! いつも、一生懸命、頑張ってくれていたの、知ってるから」
若い女性が、椅子を運んで、入り口に持っていく。
次々と……次々に、人々が動き出す。
そして。
「私、魔法が使えるわよ。夜間、火を熾すのは私の仕事だった」
不機嫌そうにであったが、機関士の妻が、セルジオに申し出てきたのだった。
「では、火を熾して、部屋を暖めながら、お湯を沸かしてください。病人の方々に必要でしょうから」
頷いて、彼女は病人達の元に向う。病人看護の指示を出していたフレデリカと目が合うが、何も言わずに、互いの仕事に就く。
「あたしも、やる! 何か出来ることあるなら、やるっ。風の呪術なら使えるの」
先住民の少女、アディシア・ラ・スエルがホームステイ先の女の子と手を繋ぎながら、申し出てきた。
「自分達も、ここの人達も、守りたいから! あたしも、何かしたいっ」
「私もアディと同じ気持ちだよ! 私は魔法使えないけど、子供だって出来ることあるよね。椅子とか運べるし」
女の子――船長の孫と、アディシアは頷き合う。
「それでは、アディさんは、出来るだけ風を弱めてくれますか? 瓦礫が役場棟を傷つけないためです。船長のお孫さんは、大人が壊した椅子を持ってきてください。窓を補強した方がいいと思いますので。怪我をしないように、気をつけてくださいね」
慌しいながらも、優しくセルジオは言う。
「わかった」
同時に言い、二人は作業に取り掛かる。
フェネア・ナ・エウルも立ち上がる。
島の子供達の中では、私が一番お姉さんだから……。
何が出来るだろう……。大したことは出来ないかもしれないけれど……。
共にやってきた、島の子供が泣いている。
先ほど、手を掴まれた子だ。
よほど、怖かったのだろう。
当たり前だ。
こんな状況なのに……。不安でたまらない状況なのに。更に、あんな事を言われたのだから。
その子の隣で。
肩に手を置いて、座らせて。
最初は語りかけるように。
穏やかに、歌い始めた。
私の歌で、不安を少しでも和らげることができたら……と。
ゆっくりと。
子守唄のように。
少年の肩をぽんぽんと叩きながら。
ゆっくりと、ゆっくりと。
周りの喧騒さえも消してしまうリズムで。
少年の心に響くように。
母が子を愛しむ歌を。
幼い頃、毎日歌ってもらった歌を……。
少年は、フェネアに抱きついてきた。
フェネアの胸で泣いた。
「大丈夫、大丈夫。皆、ホントはいい人なのです。
ちょっとびっくりして、どうしたらいいのか分からなくなっちゃっただけです」
少年の背をさすりながら、フェネアは歌い続ける。
先住民の子供達がフェネアと少年を取り囲むように座る。学園の子供達も混ざっている。
誰かが、大陸の歌を歌いだした。
先住民の子供達も学園で一緒に歌った歌だ。
「よーし、皆で歌おうぜ!」
声をあげたのは、学園高等科の学級委員、バリだ。
フェネアは、少年を抱きしめたまま、輪唱を始める。
子供達が次々に歌い始める。
皆で励ましあうように。
勇気を奮い起こすように。
いつの間にか、手を繋いで。
リズムを取って。
自分達だけではなく、周りの皆全てを励ますような大声で、歌っていた。
子供達に僅かに笑顔が戻った頃、フレデリカは子供達に声をかけ、病人看護の手伝いをお願いする。
窓からも、ドアからも離れた位置に、病人達は運び込まれている。
子供達の目に、族長や外の様子が入らないよう、自然に子供達をそちらへ導いた。
セルジオは、暴動が沈静化する会議室に安堵の息をついて、集中しているリリアと付き添っているホラロの元に戻ろうとした――その時。
「あっ」
リリアが小さな声を発し、目を強く閉じた。
同時に、激しい光が差し込む。
パン! と何かがはじけ飛ぶ音がした。
「攻撃が始まりましたか」
ホラロが歯噛みしながら窓の外を見る。
どうやら、魔力エネルギーの攻撃が浴びせられたらしい。間一髪、リリアが中和させたのだ。
リリアは無言で意識を集中している。
しかし……。
重い。
リリアは思いがけない負担に、足が震えそうであった。
中和の瞬間に、身体にかかった負荷を表すのなら……自分が二人、自分の上におっこちてきたような負担を感じた。
何度、耐えられるだろう……。でも、集中を解くわけにはいかない。交代をしようとしたその瞬間に、攻撃を受けたら、この役場棟は倒壊してしまうだろう。
ダメと、言われても。
無理と、言われても。
それでも全て守りたかった。
「負けるもんかッ!」
声を発して気合を入れる。
あなたの魔力なら、島全体を守ることも可能だと言われた。
その私が、この程度の攻撃に負けるはずはない。
この程度の攻撃に耐えられず、誰を守れるというの!?
根性出せ! リリア・アデレイトッ!!
魔力をぶつけながら、心の中で絶叫する。
「こちらは大丈夫ですから、皆さんは作業を!」
セルジオは不安がる住民に声をかけて、リリアに寄る。
「無理はしないでください。いつでも交代できますから」
リリアは頷いた……瞬間にまた、光が襲う。弾け飛んだ。その次の瞬間にも、また。
リリアはガクリと膝を付く。ホラロがリリアの肩を両手で支えた。嫌いな相手だ。しかし、今は振りほどく余裕もない。
「リリアさん、必要分だけ力を集めるんです。そうすれば、負担は少なくすみます」
ホラロの言葉が耳に入る。入りはするが、今浴びせられる攻撃を中和するので、精一杯だ。
連続で、エネルギーが打ち込まれる。エネルギーの向う先を探り、エネルギーをぶつけて、中和する。
精神も、肉体的負担も相当なもだった。
学園の子供達の姿が、目に映った。
心配そうにリリアを見ている子供達……。
「全然平気よ、こん、なの!」
強がってみせる。
絶対……負けない!
光と音に、村人達が恐怖し、寄り添い合う。
「大丈夫、みんな、大丈夫だもん」
震えながら、アディシアは、風の威力を弱め続ける。出来ることを、しなければ……。リリアが頑張っている。皆も、動き始めた。
恐怖で何もできなくなったら、本当に終りだから……。
友達の手を繋ぎながら、アディシアは、窓に近付き、風を弱め続けるのだった。
ここは、一番危ない場所だけれど。
ちゃんと、リリアさんや、皆を信じて。
あたしは、あたしの出来ることを……。
一方。村長が交渉に向った後の応接室では、オリン・ギフトにより、作戦が提示されていた。
「族長……いや、異形の生命体は、魔力が飽和状態と思われる。魔法鉱石を使い、村から離れさせることが最優先と考える」
その作戦は以前、模型として作ったミニ熱気球を使い、オントを誘導するというものだった。
雨の抑止と風の誘導が必須になる。ミコナとフッツと綿密な打ち合わせをする。
ミコナへは、時計を持たせ、決められた時間に魔法を発動するよう話したのだが、臨機応変に対応できないため、自分も行くと、ミコナは言った。
「私も、フッツさんと一緒に行きます。これだけ雨が降っているのなら、水の壁で自分の身くらい守れます」
「そうだな……一人でも戦力は多い方がいい。しかし、無理はしないように。危険を感じたら、役場棟に戻るんだぞ?」
オリンの言葉にミコナは頷く。ラルバがそっと、ミコナの肩に手を置く。本当は無理矢理にでも止めたいのだが、彼女自身が戦うことが、彼女自身を救うことにもなると、解るから……ラルバも止めなかった。
「役場棟内には、罠を仕掛ける。罠といっても単純なものだ」
オリンの考える罠は、硝子片や釘に毒を塗って、撒き散らすという簡単なものだった。相手側にはこちらが女子供ばかりの集まりで、戦力に乏しいことが知れているはず。ならばそれを逆手にとって、単純な方法で罠にかけようというわけだ。
薬の中でも強力なものを……僅かであっても、致命傷になるものを選ぶ。
無論、それだけで対処できるとは思っていない。自らも戦闘に出るつもりだった。
「ラルバ君。君には異形の手の切り落としをやってもらいたい」
オリンは方法をラルバに説明する。
魔力を通し易い素材で出来た糸を使用する。
交渉に向った者や自分達がオントの注意を引きつけているうちに、その糸をコントロールし、オントの手首に絡め、切断するというものだ。
「手首か……祭具が手首にまで入り込んでいる可能性がある。腕ごと切断がいいんじゃないか? 肩の方が手首よりは動きが単純で狙い易くもある」
「そうか、ならば、腕ごとやてみてくれ。鋼糸の先には鉄塊をつけ、頑丈な建造物や散水塔の石管なんかに撒きつけて、梃子の原理で切断を目指す」
「了解。やってみよう」
説明を終えると、各々準備に応接室を出る。
オリンは診察室に戻り、まず鋼糸をラルバに渡し、詳細を話し合うとオントの元に送り出す。
続いて、薬品を取る。
濃度の高い毒にもなる麻薬……棚の奥底。鍵のかけられた場所に保管してある。
更に、研究室に向かう。ホラロが所長ではあるが、オリンは共同開発者だ。魔法鉱石の保管場所はわかる。
全ての材料を手に入れると、会議室に向う。
出来るだけ体力のある若い男性に声をかけ、4人、廊下に集める。
手早く、仮面の集団が村を取り囲んでいると必要最低限の事態を説明し、武器を持つよう指示する。
武器庫の鍵はタウラスより預かっている。大した武器などないが、それでも、素手よりマシだ。
裏口に男性を2人配備する。こちらは捜索に出ている人々が帰還の際に使うため、罠は仕掛けられない。
表玄関には、毒薬付きの破片等を大量に撒き散らす。両脇に男性を1名ずつ、配備する。
「あなた達は早く会議室へ行きなさい!」
裏口に声が響く。
リィムのものだ。
びしょ濡れの子供が3名駆け寄ってくる。ミコナが会議室に誘導をする。
「仮面の人達が、来ますっ!」
リィムとピスカが、オリン達を見つけ、叫んだ。
「二人はすぐに会議室へ! 医療班もそちらにいます」
フッツが裏口に駆け寄る。
戦闘が始ろうとしていた。
オリン、フッツ、ミコナは裏口から外へと飛び出す。
リィムが足止めした仮面が3名、迫り来る。フッツがオリンから渡されていた毒の刃を魔法で飛ばす。
「雨を!」
「はいっ」
オリンの指示でミコナが雨を止める。
オリンが熾した炎をフッツが起した風が取り込み、役場棟の周りを一周させる。迫っていた仮面が数名巻き込まれるのが見えた。
アディシアは窓から……。窓に見えた仮面の足に向かい、えいっと風魔法を放つ。足を取られてよろめいたところに、オリンの炎が再び放たれ、男は炎に包まれる。ミコナが水分を弾き飛ばせば、もっと効果があったのだろうが優しい彼女にはそこまでは出来ず、そこまでのサポートを求めることもできなかった。
異形の者の姿が肉眼で見える。エネルギー弾が役場棟に浴びせられる。寸前でエネルギーははじけ飛ぶ。役場棟から少しでも離れれば、あの攻撃の被害を受ける可能性がある。
今にも飛び掛りそうなレイニの姿が3人の目に映った。
連続して打ち込まれるエネルギーを前に、3人は行動に移せないでいた。その時――。
「オント様ぁぁぁぁ!! 悲しいのは嫌だ! 苦しいのは嫌だ! 誰も、誰も傷つけたらダメだ! 殺したらダメなんだーーー!!」
絶叫が響き渡った。オントが自分の手を……手にしがみつく少年を見た。
「今だ!」
オリンの合図を受け、ミコナは集中をする。
広範囲。出来るだけの範囲の雨を止める。役場棟の中から、アディシアも……そして風魔法を使える者達が、風を抑えている。オリンは懐に抱えていた熱気球に火を点け飛ばす。
「制御装置はこっちだ!」
鉱石の欠片を手に、声を張り上げながら、オントの元に走る。
オントが振り向いた瞬間に、オリンは鉱石を気球に投げ入れる。
フッツが風を操り気球を高く浮上させ、山の頂上の方へと飛ばす。
しかし……。
オントは広範囲のエネルギー弾を気球に向けて放つ。
エネルギーと、気球……の中の魔法鉱石が衝突し、爆発を起す。
弾けとんだ石が、周囲に落ちる。
石の欠片をあびながら、オントは笑った。
「力、力だ……くはははは、ふはははあははぁ!」
「くっ……」
オントを遠ざけることには失敗した。しかし、やらねばならない。
オントに飛び掛る者がいた。
反撃をするため、オントは、手にしがみついている少年の頭を飛ばそうとした――。
瞬間、オリンは高く手を上げ、炎を飛ばす。
それが、合図だった。
ラルバ・ケイジが建物から飛び降り、糸を引く。強く。同時に糸を通じ、風刃を発動する。
ボトリと、腕が落ちた。異形と化した、オントの腕が。
「ぐぎゃあああぁがぁぁあああ!!」
痛みは感じるらしい。
切断された付け根から、風のような波動が流れ出る。
投げ出された少年の元へ、オリンは駆け寄る。止血を始めるが、非常に危ない状態だった。
「軽く止血はした。急所は外れている。しかし、かなり危ない状態だ。すぐに、役場棟の病室に運んでくれ」
彼の元に集まった先住民に指示を出すと、周囲を見回し、レイニとタウラスを見つけ、二人の元へ駆ける。
オントの腕から、魔力があふれ出していた。
溢れ出たエネルギー周囲に渦巻き、大気をも震撼させる。
「お前を道連れにするッス」
難民村に駆けつけたアルファード・セドリックが、オントに飛び掛っていった。
魔力が乱舞し、周囲を破壊する。
家が軋み、細い木は真っ二つに折れる。
「伏、せろっ!」
オリンは、レイニとタウラスに体当たりをするように、地に伏せさせる。
魔力抵抗のない人物に、この力は耐えられない――。
無論、魔力の暴走は役場棟にも影響を出していた。
村人の魔法では、抑えられないほどの風が押し寄せ、たたきつけ、軋ませる。
突入してきた仮面は、罠と、村人の必死の防衛で打ち倒され、縛り付けられた。
子供達は病人達と共に、部屋の隅に集まっている。魔力のある子供もいる。特に、難民村の子供は授業で魔法の勉強をしていただけあり、変化に敏感だ。多くの子供が、激しい魔力の暴走を感じ取り、泣き出していた。
フェネアは恐怖に耐えながら、目を瞑り、子供達と手をぎゅっと繋いで歌を歌う。
フレデリカは、泣き出す子供の傍にいっては、頭をなで、大丈夫だと、声をかける。
ミコナも役場棟に戻り、セルジオの傍、雨を止めるよう魔法を使い続けたが、膨大な魔力によりかき消されてしまう。
竜巻が起こる。魔力の渦だ。
家々が崩れだす。瓦礫が埃のように踊る。
風と破壊音が、響きわたる。
セルジオはリリアの手から魔力増幅装置を受け取る。
自分の番が来た。
ミコナが近付き、セルジオの手を取った。
頷きあったあと、セルジオは意識を集中して……防衛魔法を発動した。
「セルジオ君、水で防ぐのではなく、渦巻く魔力そのものを利用してください。その力を防衛に使い中和するのです」
ホラロの声に頷きながら、セルジオは意識を村とその周辺に飛ばす。
魔力を感じ取り、自分の下へ。
ミコナの手を放し、一人、皆から離れる。
風……ではない。なんらかの力が、少しずつセルジオに集まり、渦巻いていくのが分かった。
自然と、皆、セルジオから離れる。
ミコナは両手を合わせて。それでも、セルジオから目を逸らさずに、祈った。
「この力が、島の平和に繋がりますように……」
セルジオが微笑む。
ふわ……っと。
風が吹いたような気がした。
暖かな空気に、覆われたような気がした。
雨が止む――。
風も。
静けさが、訪れる。
セルジオを取り巻くエネルギーも消えていた。
人々の心の高ぶりも治まっていく。
心の中にまで、穏やかな風が通り、覆い、癒してくれているかのように。
「……平気ですよ、外に出て」
ホラロが言い、リリアは頷いた。
「さあ、みんな、助けに行くよ! 私達の村長さん達をねっ!」
子供達に精一杯微笑みかけた。
でも、自分は行けなかった。そのまま、意識を失ってしまったから。強烈なエネルギーを何度も中和したリリアも、既に限界を超えていた。
真っ先に役場棟を飛び出したのは、医療研修生、アリンだった。
フッツが罠の仕掛けられていない裏口から出るよう、村人に指示を出している。
アリンは、大切な……本当に大切な人を見つけて、駆け寄る。
「先生、先生、先生っ。しっかりして」
背中にしがみついて、泣いた。
オリン・ギフトは、ゆっくりと起き上がる。
「大丈夫だ」
といつもの穏やかな声を発し。
心に決めた最愛の女性を腕の中に抱いた。
「もう、どこにもいかないから。アリンを独りきりにしないから」
しがみつく彼女を、強く抱きしめて。その頭を撫でる。
「一緒に幸せになろう」
その言葉は、結婚の約束だった。
アリンはオリンの腕の中、何度も何度も頷いて。
だけれど、まともな言葉を話すことは出来なかった。
怖くて、悲しくて、苦しくて……。
「先生……先生……っ」
なによりも、嬉しくて。
彼女に続くように次々に役場棟から人々が飛び出し、レイニとタウラスの元に集まり、二人を抱えあげた。二人は村人に囲まれて、一瞬安堵の顔を見せた後、意識を失った。
「ちゃんと説明してもらわないと、納得できないわよっ」
そう言いながら、機関士の妻がレイニの腕をとって、担ぎ上げた。反対の腕は、フレデリカが。
「お帰りなさい……」
腕の傷を労わりながら、自分の肩にまわした。
女性達が心配そうに見守る中、タウラスはラルバが担ぎ上げる。
「あんたが無茶すると、レイニさんのケアが大変なんだがなぁ」
と、冗談交じりに苦笑しながら。
壊れた家よりも、周りの惨状よりも、誰もが何よりも優先して……二人を、役場棟へと運んだ。
儀式を阻む者が倒され、儀式に必要な祭具はアルファード達の手により、社へと運ばれている。
「もう大丈夫だ。あとは待つだけだ」
ラルバが、ミコナの傍へと戻る。
会議室で身を寄せ合い、村人とホームステイに訪れた子供達は待つ。
フェネアは歌を。相変わらず歌を歌いながら、皆を励ました。
澄んだ歌声が、心に沁みた。
セルジオは壁にもたれて、目を瞑っている。辛うじて意識はある。もしそれでも儀式が失敗した場合には、また自分がやらねばと思っていた。
傍で倒れているリリアも同じ思いだった。少しでも気を抜くと、また意識を失いそうになる……。でも、儀式が終わるまでは!
気力で、意識を保つ。
ホラロはそんな二人を看病しながら、島の魔力の状態を探る。
病人が、病室に戻される。付き添っていたフレデリカから、タウラスもレイニも無事であり、命に別状はないと伝えられる。
安堵のため息が次々に漏れる。
フレデリカは点呼を取った。
誰一人、欠けてはいなかった。
仮面との戦いで怪我をした人物もいる。
だけれど、誰一人命を失った者はいなかった。
元々の病人を除いた村人の被害状況は以下だった。
軽傷:4名(ピスカ、リィム、他男性2人)
重傷:1名(男性1人)
重度の疲労:4名(レイニ(負傷)、タウラス、セルジオ、リリア)
数分――数時間だろうか、そのまま待った。
知らせは、鳥の声だった。
鳥の囀りが、教えてくれた。
全て、終わったと。
日が、射し込んでいる。
遠くの空も、晴れていた。
虹が見えた。この島で初めて見た虹だった。
力が抜けたかのように、座り込む人がいた。
抱きついて泣き出す人もいた。
騒ぎ出す人も……。
以前にもこんなことがあった。
島に辿りついた時だ。
この場所に辿りついた時も。
こうして、皆で喜び合った――。
* * *
「また来てね」
外交辞令ではなく、本当にそう思ったから言った。本当にまた一緒に遊びたかったから。
「うん、またね」
船長の孫と、アディシアは繋いでいた手を離した。
見送りは少なくはなかった。しかし、迎えの時のような、明るい雰囲気は微塵もない。
決まり悪そうに子供達を見ている大人ばかりだ。
彼等に非はない。わかってはいるが、どうにも彼等の集落を許すことができなかった。
「いっそ、ずっとここにいてもいいんだぜ?」
誰かが言った。でも、子供達には子供達の帰るべき家がある。もしかしたら、流されてしまったかもしれないけれど……それでも、待っている家族があるから。
「お世話になりました」
「ありがとうございました。大雨で滑りやすくなっていると思います。どうぞ、お気をつけて」
テセラ・ナ・ウィルトとフレデリカ・ステイシーが握手を交わす。
「その……集落の者の身柄や遺体を改めて後日、引き取りに参りますので」
「よろしくお願いいたします」
「ルビイ・サ・フレスもその時に迎えにあがります。どうか、それまで彼をよろしくお願いいたします」
「お任せください。容態も安定していますし、今は、こちらにいた方が適切な治療が施せると思います。彼は功労者ですから……小さな身体で必死に族長を止めてくれた……決して蔑ろにはいたしません。お約束します」
「ありがとうございます」
深く、頭を下げて、テセラは子供達を率いて帰っていく。
子供達の他に、拘束された大人が3名、テセラに付き従う。仮面の一味の中で、テセラの説得に応じた者だ。彼等も一緒に帰還することになった。
そして、翌日。
タウラス・ルワールにより、会議室に住民が集められた。
タウラスは、皆に全てを語った。
今までの交渉。先住民の族長、オントの裏をも。
オント・ナ・ウスタ族長は、アルファードとカケイにより、倒され、その身体は魔力の暴走により砕け散り遺体は残らなかった。
カケイ・ア・ロウンは、オントに止めを刺した際、魔力の波動を受け絶命した。
仮面の人物は計11名であり、ほとんどが湖の部族の民であった。うち3名はテセラの説得に応じた為、拘束され湖の集落へ帰還した。残り8名中5名は絶命。3名は拘束し、独房にいれてある。
集落の民、一人一人は決して悪い人々ではない。
自分達も、怒りや嘆きで見失うものがあれば、第二のオントになる可能性を秘めている。
そのように、人々に話して聞かせる。しかし……。
「村人じゃなくて、族長でしょ? 向うのトップでしょ? それって、あっちの村そのものの姿を表してるってことよ」
「私達は、そういう行為を許さない」
「そのように、制度を作っている」
「犯罪者全員が捕まったわけじゃないんでしょ? 洗い出しは、ちゃんとしたの!? 大体今、誰が指揮をとってるの? いい加減な体制じゃ、仮面の先導者が変わるだけで、また同じことが繰り返されるだけよ」
「誰もが、間違いを犯すことがある。だから、ルールが必要。私達はそのルールの中で生きている。話し合いで代表を決め、話し合いで村を作っている。だから、そういうことを大きくなる前に未然に防げるわ! だけど、彼等は統率ができていないから。また同じことをきっと繰り返す」
村人達の心は頑なだった。
良いことなのか、悪いことなのか……意見が一致している。
「彼等ひとりひとりが悪人じゃないっていのはわかるわ。だけれど、もう巻き込まれるのは沢山。深く関わりたくない」
それが、全体の意思だった。
『それならば、自分達の力で彼等を統率しよう』と扇動を始めたホラロを抑えることだけで、精一杯だった。
タウラスや、橘・花梨、リィム・フェスタスといった先住民友好派が場を宥めつつ、話し合いを続けた結果。
・交易は今まで通りに続ける。
・ホームステイ、その他一般人の交流は当座行わない
・先住民の一般訪問は受け入れない。勝手に受け入れた村人は厳罰を受ける。
・先住民の集落への訪問は公務を除いて原則不可。許可なく行った者が、問題を起した場合は自己責任。
そのように、決められる。
今は、こちらより、湖の集落の方が大変な状態だろう。しばらくは、それも仕方がないのかもしれない。
「着ようよ、ウエディングドレス! 手伝うよ、私!!」
リリア・アデレイトは入院中だった。増幅装置の使用の反動で、身体が重く、自由に動かせない状態だ。
だけれど、友達が結婚するという話を聞いたら、寝てなんていられない!
「男の人ってそういうとこ、無頓着だしねー」
「えー、いいよ。材料とかないし。せ、先生と一緒にいられれば、式なんてしなくてもいいくらいで……」
アリンが幸せそうに照れながら答えた。
「お家だって、タウラスさんの家建ててる場合じゃないって。二人の新居を建てるのが先だと思うんだけどねっ」
「新居なんて〜っ。そういうのは、人生設計がもっと出来てからで……きゃあっ」
ますます赤くなるアリン。
「でも、ウエディングドレスは着なよ! もったいないよ、一生に一度だよ!? 私、レイニさんにも相談してみるっ」
時々、レイニはリリアやセルジオを心配し、見舞いに来る。リリアは自分の将来について、レイニに語り、今後も寮で暮す資格をゲットしたところだった。
「やだぁ、恥ずかしいよぅ」
赤くなって俯いている友達が、とても愛らしい。
「でさ、アリンちゃんいつまでオリン先生のこと、先生って呼ぶつもり? 家でも先生って呼び続けるつもりなのかな?」
ちょっと意地悪気に聞いてみる。
「そ、それは、家では……えーと、オ……うわっ、ダメだ……あー……うーん、あ、あ、あ……うううう……っ」
突如、がたんとアリンは立ち上がり、リリアに飛びついた。
「きゃあああああ〜〜〜〜っ、ダメダメダメダメ、いやあっ、いえない、いえない、言えないよぉぉぉぉぉぉ、あ な た、なんて言えないよぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
真っ赤な顔で、リリアの背をバンバン叩く。
「痛い、痛いよ、アリンちゃん。あははははっ。痛いってばーっ」
「やだやだやだやだやだやだ〜っ 先生は先生だもん、やああああだぁぁぁぁーーーっ」
アリンは顔を覆って、蹲ってしまった。
そんな友達の姿に、身体の痛みも忘れ、お腹を抱えて大笑いする。
ふと、リリアも学園の男の子の姿を思い浮かべる。
「ん〜。私は、まだまだそういうのは、当分先かなー」
「でさ、走って! って、俺たちを先に行かせてくれたんだ。やっぱ、素敵だよな、リィムさんって」
「いつもと違ったピスカさんも、結構可愛かったよなー」
学園の男子寮生達は、寮の補修に回りながら、会話に花を咲かせる。
「あ、俺、花梨ねーちゃん家の倉庫修理も手伝わなきゃ。悪い、自分の分は帰ってからやるから」
そう言って、バリは一人作業をやめ、支度の為に自分の部屋に戻っていった。
「……バリはさ、花梨さん派だろ、絶対」
バリの後ろ姿を見ながら、高等科の生徒が言った。
「そっか? リリアじゃねーの。ほら、入院しているリリアの見舞いに何度も行ってるらしいぜ〜。会議室でも、手ぇ繋いだりしてさぁ」
「そうそう、その後、バリってば、じーっとリリアの後姿見てたしなー」
修繕は初めてではない。手際よく、寮生達は作業をこなしていく。
今日の会話はこの調子で専ら村の女性達の話だった。
「ハルは? お前は好みの子とかいねーの?」
大人しい10歳の男の子に声がかかる。
「ぼ、僕は……レ、レイニさんがす、すき」
意外な言葉に、寮生の手が止まる。木材をバラバラと落とす子までいた。
「げっ、マジ? 限度というものがあるだろ。年上ならせめて差は9までにしておけ、な」
「年の差なんて、か、関係ないよ。え、えっと……僕より、ずっと大きくて……き、綺麗だし。こう、ぎゅっとされたいというか……」
「なんだ、母親としてか〜。ハルはガキだなぁ」
「違うよー。ごもごもごも」
その先は言葉になっていなかった。
「学園の女子はガキばっかだし、やっぱ花梨さんとか、リィムさんが狙い目だよなー」
「リィムさんは、ホラロおじさんのモノだとかゆう噂だよ」
「あのおっさんの!? 趣味悪いのか、リィムさん」
「結婚とか考えてるのかな、やっぱ」
「結婚といえばさ、アリンが結婚するって話だよな!」
「ホントかよ!? 相手は誰さ?」
……その後も、作業しながら寮生の会話は弾む。年上の女性に憧れるお年頃らしい。
それから数日後、テセラ・ナ・ウィルトと、湖の集落の男性数名、更に山の一族のセゥと名乗るものが、遺体と仮面の一味を引き取りに現れた。
レイニとタウラスが対応し、それ以前、湖の集落から帰還の際にも、タウラスが襲われたことをも話して聞かせる。実行犯にその場で犯行を吐かせた後、彼の身柄も引き渡す。
また、セゥと名乗る人物は、オリン・ギフトが作成した似顔絵の人物に酷似していることから、事情を聞くと、祭具奪取の実行犯だということだった。オントに育てられ、善悪を知らず、彼の命令に従っていたということで、情状酌量になったらしい。本人の申出もあり、謝罪に訪れたということだ。すぐに、ラルバ・ケイジと、機関士夫婦に会わせる。
ラルバと機関士自身は謝罪を受け入れ、今後島に尽くし、人として生きるという彼の言葉を信用した。
機関士の妻は納得いかないようであったが、咄嗟のことで、故意ではなく殺害するつもりもなかったという説明と、セゥの自分に出来ることであれば、どんな償いでもするという低姿勢な態度に、セゥに対し暴言を吐くに止め過剰な賠償請求はしなかった。
村としては、セゥ自身には保養所の修繕と清掃を賠償として要求した。
湖の部族全体と、山の一族に関しては、代表が決まっておらず、犯人の処遇も何も決まっていない状態であることから、相談できる状態ではないと判断し、集落が落ち着き、代表が決定し次第、代表会談を開催するとだけ決定される。その決定さえも、実行に移されるかどうかはテセラや同行してきた者達次第なのだが。
ルビイ・サ・フレスは相変わらず身動きが出来ないほどの重傷であったが、背負われての数時間の下山には耐えられると判断され、湖の集落へ帰還することになる。難民村の……オリン・ギフトの処置でなければ、彼は一命を取り留めることは出来なかっただろう。
更に数日を経て……。
「おはようございます」
目を覚まし、一番に飛び込んできたのは、少女の安堵の笑みだった。
「お、おはようございます、ミコナさん」
セルジオ・ラーゲルレーヴは身体を起こす。節々が痛むが、起きれないほどではない。
「ここは……病室ですね」
「はい。セルジオさん、10日も眠っていたんです。身体には異常はないということで、そのうち目覚めるだろうと言われてはいましたが……やっぱり心配で……」
手が空けば、ミコナは病室に来ていたらしい。セルジオの傍らで、目覚めるのを待っていたようだ。
「大丈夫ですよ。無理はしていませんから」
こくりと頷いて、ミコナは微笑んだ。
「お腹、空いてますよね? 私、厨房借りて何か作ります。何が食べたいですか?」
「それじゃ、簡単に作れるものをお願いします。……今日は、もっとミコナさんと話がしていたいから」
その言葉に、ミコナは、はにかみながら微笑み、「私もです」と言って……セルジオの手を取って頬を寄せたのだった。
村の被害状況といえば、全壊した家3件、半壊5件、屋外の農作物は全滅。家畜の被害はさほどではなく、栽培ハウスの損壊は少々であった。
村人達により、連日、建築、修繕作業が行われている。
天候もよく、あの件を経て、皆の結束が高まったため、作業はスムーズに行われている。
この場所を見つけた頃の気持ちを、皆、思い出していた。
フレデリカ・ステイシーは執務室でレイニ・アルザラにそんな村人の状況を説明しながら、自分の目標についても、レイニに話し出す。
自分が秘書になった最大の理由は――。
「この島を、皆の帰ってこれる場所にしたいんです」
私は、自分達以外にも、生存者がいると信じている。
その人々を受けいられる村にしたい。
ここから、捜索に出る人も。
大地を求めて海をさまよっている人々も。
全ての人が、帰ってこれる島に。
島の外にいる人は、自分の大切な人かもしれない。
誰かの大切な人かもしれない。
これから、大切になる人かもしれない、から。
「そうね」
レイニは頷いて、フレデリカの考えに賛同の意を示した。
「私は何れ、海に出るわ。本職は航海士だもの。私が行って、捜し出し、引っ張ってくるから」
今は共に、村を造ろう。
そして、あなたはここで、私の帰る場所を守っていて。
皆の大切な人々を受け入れられる村を造っていてね。
そう言うと、レイニは手を伸ばし、フレデリカの肩を抱いた。
フレデリカの赤い髪と、レイニの茶色の髪が触れ合った。
「ねえ、たまには一緒に夕食たべようか。タウラスも呼んで一人暮らし同士3人で」
「はい、よろこんで! それでは、私は栄養のつく食材を調達してきます」
笑みを残して、フレデリカは執務室を後にする。
この青い空の下。
同じ色の海のどこかに。
きっと、逢いたい人が、いる。
戻ってきて。
母なる大地に。
私達のもとに――。
環境-------------------------------------------
[村周辺]
・東側は崖。体力20もしくは、魔力(風)20あれば、なんとか崖を登ることも可能と思われる。
・その他は深い森。
・南に細い川。河口に湖の集落。
・頂上付近に山の一族の集落。
・往復2時間くらいの滝付近に保養所。
・南東に果樹園。収穫終了。村の管理下。
[他]
・村から人の降りれる海までの最短ルート(普通の成人男女)→東側の崖沿いを北に進み下山していく。片道半日程度。
・湖の部族の集落から難民村まで(登り)は普通の先住民成人男性で4時間。難民成人男性で5時間程度の距離。崖(高さおよそ30メートル)や大岩の迂回が必要。
・難民村から社まで(登り)は、難民村成人男性で1時間程度の距離(道のない状態で)。
世帯内訳---------------------------------------
老夫婦:3組【6人】(アヤリ家)(果樹園担当夫婦家)
老夫婦と子1人:1組【3人】(マズカ家)
老夫婦と子2人:1組【4人】(シラン家)
老夫婦と女性と子1人:1組【4人】(船長家)
老男と女性:1組【2人】
夫婦と子:1組【3人】(機関士家)
老女と女性:1組【2人】(アリン家)
老女と子1人:4組【8人】
老女と女性と子1人:1組【3人】(ピスカ家)
女性と子1人:12組【24人】(イリー家)(シエリ家)
女性と子2人:3組【9人】(中等科教師家)
女性2人と子2人:1組【4人】(ユズ家)
男性と子:2組【4人】(ラルバ家)(フッツ家)
単身老男:1人
単身老女:4人
単身男性:7人(ホラロ、オリン、レザン、シャオ、タウラス、アルファード、セルジオ)
単身女性:6人(レイニ、リィム、花梨、フレデリカ、リリア)
寮生:12人【単身2人(シオン、バリ)】
計50世帯、寮生12人
※
老夫婦=夫婦共に60歳以上
老男、老女=60歳以上男女
男性、女性=15歳以上男女
子=15歳未満の子供
公務担当者-------------------------------------
[役場]
レイニ・アルザラ(村長、総統括、議長)
タウラス・ルワール(村長補佐)
フレデリカ・ステイシー(村長秘書)
ラルバ・ケイジ(護衛)
フッツ(警邏)
ピスカ(調査・広報)
他(ボランティア)
[外交]
タウラス・ルワール(責任者)
フレデリカ・ステイシー
[交易]
橘・花梨(代表)
レザン(運搬・作成)
シラン(運搬・護衛)
マズカ(事務)
シエリ(仕入・販売)
バリ(研修中)
[病院]
オリン・ギフト(医師)
イリー(助手・研究生)
アリン(研修中)
他(ボランティア)
[学園]
オリン・ギフト(高等科教師)
イリー(初等科世話係)
リリア・アデレイト(寮監、庶務)
他教師1名(中等科担当)、世話係1名
[栽培ハウス]
リィム・フェスタス(責任者)
ホラロ・エラリデン(補佐)
他(ボランティア)
[警備隊]
ラルバ・ケイジ(総指揮)
シャオ・フェイティン(特務、精鋭部隊指揮)
フッツ(隊長)
ルルナ・ケイジ(見習い)
他
[果樹園]
老夫婦
セルジオ・ラーゲルレーヴ
[大工(含む土木、林産等)]
船長(総指揮)
機関士(現場指揮)
他専任6名、ボランティア多数
[飲食]
ユズ(店主)
ミコナ・ケイジ(家事手伝い)
カヨ(家事手伝い)
他1名(調理師)
[魔法研究所]
ホラロ・エラリデン(所長)
オリン・ギフト
[都市開発推進部]
オリン・ギフト
(ミコナ・ケイジ)
民間事業(団体数)-----------------------------
畜産(2)
農産、酒造(1)
水産(1)
服飾(2)
工芸(2)
雑貨(1)
自由業(多)
住民状況---------------------------------------
住民の協調A
住民同士の信頼B
住民達の結束B
先住民への感情E
村長(及び補佐)への信頼、信用A
※NPC紹介
【レイニ・アルザラ】
33歳。一人暮らし。航海士。村長。
竹を割ったような性格。率先派。
外見イメージ:藤原紀香を強気にしたような。
身長:171cm 体重:58kg
髪:茶色ショート 瞳:茶色
諸問題の他、村に名前がないことや、出産率の低下を気にしているらしい。
彼女自身、再婚を検討していた時期があったとか。
初婚は17歳。娘は洪水時14歳。
【ラルバ・ケイジ】
23歳。未婚。役場棟で妹と二人暮し。警備隊総指揮。村長護衛。元騎士。
温厚。熱血漢なところもある。
外見イメージ:23歳時の新庄剛志を多少柔らかくした雰囲気。
身長:184cm 体重:79kg
髪:茶色ショート 瞳:茶色
タウラス・ルワールにより、警備隊総指揮の座を譲られる。
指揮は向いていないと一度は断るのだが、押し付けられる。……説得や、押しに弱い。
結婚相手は妹達を送り出してから、と考えているが、強引に迫られれば案外あっさり結婚してしまうのかも。
【ミコナ・ケイジ】
16歳。未婚。魔法学生だった(技術を選考)。食堂の手伝いをしている。
何事にも一生懸命。お人良しなところがある。
外見イメージ:上戸彩を優し気に、気弱にしたような。
身長:158cm 体重:48kg
髪:茶色セミロング 瞳:茶色
相変わらずユズおばさんにこき使われている日々。
オリン・ギフトから、散水塔の管理人をやらないかとの誘いを受ける。自身がなく、消極的だが、やってみたいとは思っている。
まずは、ユズさんの元から自立をすることを目標に頑張っている最中。
【ルルナ・ケイジ】
10歳。兄と2人暮らし。
甘えん坊。バランス良く、それなりに優秀。
外見イメージ:12歳頃の安達祐美。
身長:145cm 体重:36kg
髪:朱色ロング 瞳:茶色
兄の元、護身術や剣術の修行に励む日々。
警備隊への仮入隊を志願するが、年齢的理由で不採用。しかし、暇な時は兄に付き纏い付き纏い、強引に見習いの資格を勝ち得る。
将来は兄に代わり、総指揮になることが目標。
恋愛にはまだ興味なし。異性では、お兄ちゃんが一番最高に大好き。
【ホラロ・エラリデン】
37歳。既婚(妻子は洪水の犠牲に)。一人暮らし。魔法学者。
ペドフィル。気まぐれ。
魔法具の製造は魔法鉱石を入手するまではお預け。怪しい?魔法薬の研究に勤しんでいるらしい。
島を自分達が支配すべきという考えの持ち主だが、現在の生活にほぼ不満がないため、比較的大人しくしている。
扇動を始めても、人望がないので、彼単独であれば、大した脅威にはならないかと。
結婚相手募集中! 可愛い子限定。無論、リィム・フェスタスが第一候補。
【フッツ】
20歳。未婚。妹と二人暮し。船員。風魔法使い。老け顔。
冷静沈着。しかし、心は熱い。大人びており、妙に冷めているところもある。
20歳になりたてなのだが、30近くに見られるらしい。
恋愛は奥手。自分より少し年下で、明るくて優しい子が好きだとか。
【ピスカ】
22歳。未婚。祖母と弟と三人暮らし。記者。
明るい。行動的。好奇心旺盛。
天然系の女性。レイニに依存しているところがある。
強くてカッコイイ男性が好き。見つければ難民、原住民問わず、突撃している。
【バリ】
13歳。寮生。一人暮らし(友人を泊めることが多い)。高等科学級委員。商売研修中。
明るく、勉強も運動も出来る。人望もある。
橘・花梨を姉と慕っている。研修はかなり楽しいらしい。
初恋もまだ。尊敬している人は、レイニ、オリン。特に好きな人は花梨、シオン。気になる女の子はリリア。嫌いな子は相変わらず、ルルナ。
【アリン】
15歳。祖母と二人暮し。病院勤務(研修中)。
繊細。大切な人に尽くすタイプ。
結婚を控え、家では花嫁修業に励んでいる。
【イリー】
21歳。未婚。妹と二人暮し。医療補助。看護学生だった。普段は初等科の子供の世話をしている。
優しい。世話焼き。
かなり忙しく、一生懸命働いている女性。
【ユズ】
42歳。既婚(夫は洪水の犠牲に。子2)。食堂経営。
悪人ではないが、非常にがめつい女性。難敵。
レイニ曰く「口論で負けるつもりはないが、敵に回すと面倒な人」
稼ぎの良い男性と再婚を検討している。物色中。
【カヨ】
10歳。ユズおばさんの子供。ミコナに懐いている。
食堂の手伝いをしている。ルルナに意地悪なことを言ったのは、ミコナに傍にいてほしかったから。母は愛してくれるけれど、厳しい。優しいミコナに、本当の姉になってほしいと心から思っている。
彼女の存在がミコナが食堂を後に出来ない理由の一つ。
【船長】
61歳。既婚(妻1、子1、孫1)。大工仕事を指揮している。
明朗。お茶目。年齢問わず、女性にとても優しい。無類の女好き。
一夫多妻制を訴えては、却下されている。
なんだかんだいっても、難民村のムードメーカー。
【アリンの祖母】
73歳。既婚(夫、息子夫婦は洪水の犠牲に。孫1)。
服飾の仕事で生計を立てている。
孫からオリン・ギフトと結婚をするという報告を受け、大感激。……しかし寂く思っている。
邪魔にはなりたくないので、一人暮らしを検討中。
※マスターより
こんにちは、川岸です。
今回の難民リアは2分割です。
まずは皆様、お疲れ様でした。
アトラ・ハシスにご参加、ありがとうございます。
一生懸命取り組んでくださった方こそ、疲れたのではないかと思います。熱意のこもったアクション、本当にありがとうございます。
さて、慌しい最終回になってしまったこともあり、後ほどその後を少し書かせていただきたいと思っていますー。
まだ、シナリオ紹介のあるイベントシナリオにするか、単純に皆様にその後行動をお聞きし、その後シナリオを書くか、それとも投稿コーナーにするのかと、検討中です。
ただ、難民側に関しては、シナリオ有りのイベントをやる必要があるのかどうか迷うところでして。
だって、最大のイベントがあるじゃないですか!
ほら、オリンさんとアリンちゃんの結婚という!(笑)
レイニも、「村で始めての結婚式だもの、村を挙げて盛大にやるわよっ!」って言っています。
追ってご連絡いたしますので、もう少しお付き合いいただける方は、是非、よろしくお願いいたします。
少なくとも、投稿は募集いたしますので、イラスト(サイズ指定なし。常識の範囲内の容量で)やプラリア、PCの想いやその後行動など、思い描きながらお待ちいただければ幸いです。
原住民側と、難民側は、別のマスターがそれぞれにシナリオを考え、それぞれの目的と結末を持つ、別の話でした。
しかし、2人で運営するのにそれでは寂しいという思いから、リンクをするようにシナリオを多少絡めたのですが……。
皆様のアクションの結果、予想外に双方のシナリオが絡み合い、最終回近くでは、鈴鹿マスターとかなり密な相談をして進めて参りました。
最初から、最後までお付き合いいただけた皆様。
ゲーム半ばから参加してくださった皆様。
私のほにゃらら(伏せっ)な発言に、散々耐えてくださった鈴鹿マスター。
本当にありがとうございました!