川岸満里亜
いつの間にか、診療所に彼らが集まるのは日常になっていた。
ただ、治療受ける人物が、ラルバ・ケイジから、マユラ・ナ・スウラに変わってはいたが。
リエラ・ナ・スウラは、何時ものように、怪我人や病人の看護に精を尽くし、ルビイ・サ・フレスは、手の足らない部分を補い、主にマユラの治療や世話をしていた。
ホームステイが決定したのなら、ラルバの妹だけでも、先に招くことが出来ないかと考えていたルビイだが、ホームステイの決定と同時に、ラルバの帰還も認めらたということで、ミコナを呼ぶ必要はなくなった。もうすぐ、ラルバは妹達と会えるのだ。
それは、とても喜ばしいことで、皆、ラルバと共に安堵した。
「手紙、なんて書いてありました? ミコナさんからですよね?」
聞いたのはルビイだった。
ルビイは以前、テセラ・ナ・ウィルトと共に、難民達の村に行ったことがあり、ミコナと面識がある。
「ああ、そのことなんだが……」
ラルバが手紙を取り出す。封書から出された紙は、2枚であった。
1枚は妹、ミコナ・ケイジからのものであり、妹2人共、元気でいることと、ラルバの帰還を待ちわびていることが書かれていた。封筒の文字はルルナが書いたらしい。こちらの1枚目の手紙の内容については、ラルバは安堵の笑みを浮かべながら、さらりと説明をする。
そして、もう一枚……。
「島の探索の指揮をしていたレイニさん……今は、俺達の村の村長をやっているらしいんだが、彼女からの手紙も入っていたんだ」
手紙には、こう書かれていたという。
まず、前置きとして、ラルバが真に信頼できる人物がいるのなら、手紙の内容を話しても構わない、と。
自分達の中で優れた魔力を持つ者が、自然界の魔力の均衡の崩れを訴えている。
この島自体が、何らかの魔法の力に守られているようであった。
おそらく、山の一族の儀式とは、本当に島を守るものなのだと思われる。
海面が上昇しているという報告がある。
いかに高地とはいえ、異常なまでに雪の日が多い。
確かなことは言えないが、もしも、代表会談後に、先住民の中で死者が出ているのなら、それは、“表面がどうであれ”、儀式の失敗に1歩近づいたと考えていいだろう。
難民達の集落の方が高所にある分、万が一の場合でも水害は遅れるはず。
先住民に儀式という防衛手段があるように、こちらにも、自分達を護る手段は存在する。
急いで戻ってきて。
もし、湖の集落の中に、あなたが守りたい人がいるのなら。そして、それを相手も望んでいるのなら、こちらの村に連れてきなさい。
今まで、助けてあげられなくて、本当にごめんなさい。
あなたの帰還を妹達、村の皆も切に願っています。
……中途半端な手紙だとラルバは感想を漏らした。
肝心な部分が書かれていない、と。
おそらく、手紙では語れない事情があるのだろう。
妹達のことはもちろん。状況を確認するためにも、早急に帰らなければならないと、ラルバは言った。
そして。
難しい顔をしているマユラをひょいっとラルバが持ち上げる。
ふわりと突然身体が浮かび、さすがのマユラも驚いて小さく声を上げた。
「今まで、本当にありがとう。怪我、治ってないんだから、無理するなよ?」
ベッドの上に座らせて、マユラの黒い髪を優しく撫でた。
それから、皆を交互に見回し、ラルバは感謝の言葉を述べた。
「皆には本当に感謝している。一緒に来たい人は……今はいないと思うが、なに、半日で行き来できる距離だ。落ち着いたら探索がてら、土産を持って、寄らせてもらうな」
当たり前になっていたのに。
数ヶ月、同じ時を過して。
ここに彼がいることが、既に当たり前になっていた。
別れが来ることは分ってはいた。彼の為にそれを望んでもいた。
だけれど。
やっぱり、当たり前が当たり前でなくなるのは、寂しいものだ……。
「お元気で……」
誰かの口から慈しみの篭った声が漏れた。
「上の村に来る時には、俺を頼ってくれ」
出口付近にいたルビイの頭をぽんと叩いて、ラルバは準備の為、診療所を後にした。
※このリアクションは以下のPCに発行されています。
マユラ・ナ・スウラ
ルビイ・サ・フレス
※マスターより
特別何事もなければ、ラルバは次回最初に難民村に帰還になります。
湖の集落出発前に接触することも可能です。