川岸満里亜
会議後、シャオ・フェイティンはレイニ・アルザラに呼び止められ、近日中に執務室に来るよう、命じられた。
従う義理はないと思いもしたが、仮面の男の件等の情報が彼女に漏れている可能性も考えられる。
シャオは数日後、レイニの元を訪れた。
「マールやタウラスが、あなたに警備隊をやるように勧めているようだけど……」
「その話なら、断った」
警備隊結成は、シャオにとって何のメリットもない話しだった。
「私もあなたに警備隊は合わないと思うのよ。警備隊は、統率に規律が重要だけど、あなたのイメージってそういうのから、外れすぎてるでしょ」
それは自分でも認めるところだ。特に反論する必要もない。
「そこで、私があなたに頼みたいのは……」
強い瞳がシャオの眼を掴んだ。
「諜報」
諜報……敵情を探れということか。
「会議に出席していたのだから、仮面の男の件は知っているでしょ? 先住民側からの接触も増えてきたけれど、その真意はわからない。仮面の集団が彼等に危害を加えているような話も聞いたわ。私達には、彼等の生活様式さえも、まだつかめていない。分からないまま、彼等の事件に巻き込まれているのよ。
もう一つ。先住民が主張している、樹木伐採の件だけど。船長に確認してみたところ、土砂崩れを起こしたあの場所での伐採はやっていないみたいなのよ。遠すぎるからおかしいと思ったんだけど……。この件に関しては、謝罪しておけば済む範囲であるのなら、とりあえず反論せず、こちらがやった事にしておいてもいいと思ってる。
そういうわけで、先住民の集落に潜入し、情報を得てきてほしいの。一連に事件について、彼等が対処できないのであれば、あなたが事を闇に葬ってもいい。とにかく、こちらに危害が加わらないよう、問題の解決を図りたいの。表の交渉だけで友好関係を築ければそれが一番なのだけれど、今ここで生きる民が、先住民との最低限の友好関係を損なわないように、消してしまわなければいけない事実も……存在するかもしれないから」
何も分からない。分からないからこそ、情報が必要だ。詳しい情報を得るためには、表の交渉だけでは無理なのだ。とレイニは言う。
「だからこそ、あなたのような人が存在するんでしょ?」
まるで、シャオの過去を知っているかのような言い方だった。
シャオには、レイニを見た時、一つ気にかかったことがあった。
背を向けたレイニの服の裾から見えた傷跡。踵に横一文字の傷跡がある。
海賊が、船を襲い戦利品を得る。その際に、得た“長旅の玩具”が脱走したり、身投げをすることを防ぐため、足の腱を切断する。シャオの生きてきた世界では日常的に見聞きする話だった。
「船員、乗客を安全に目的地まで導くのは、航海士の務めだと思ってるから。あなたみたいな輩に、随分お世話になったし、雇ったわ」
海の女として幾多の修羅場をくぐり、生きてきた経験で、シャオという人物の過去を察知したというのだろう。
「方法はあなたに任せる。生き残った先住民になりきって、彼等の住処に潜入してもいいわね。あなたなら、外見も違和感なさそうだし。闇にまぎれて潜伏して情報を探っても構わない。必要な経費は全てこちらで負担する。私が得た情報は、伝書鳩で伝えるわ。
引き受けてくれる場合は、今後、タウラスとは会わないで。連絡も不可。一切のつながりを断ってちょうだい。タウラスには表の交渉を続けてもらい、潜入と全く無関係でいてもらいたいの。もしもあなたが大きな事件を引き起こしてしまった場合、あなたは自分でケリをつけられる人だと思っているけど、状況的に無理な場合は、私も一緒に地獄に落ちてあげる。私の独断行為として、村とタウラスは無関係。その後はタウラスに村を率いてもらうわ」
タウラスを光。自分を闇として使おうというのか、この女は。
「まあ、あなたが警備隊の隊長をやろうっていうのなら、それでもいいけどねー。その場合は、もう少し笑顔が欲しいわねぇ。村人に対する愛情も見せてくれないとね。
あとは、護衛なんかも欲しいわ。私達のね。どの仕事も警務の一環よ。諜報だってそう」
そして、不敵に微笑み、レイニは言った。
「このまま、何の目的も持たず、森の中で独り暮らしていてもつまらないでしょ? 私があなたに払える報酬は、適所と相応の賃金……生き場所と死に場所」
※このリアクションは以下のPCに発行されています。
シャオ・フェインティン
※マスターより
諜報の任を受ける場合は、次回より原住民リアに移動になります。
出かけ前の準備(レイニへの返事等)に関しては、サブアクション欄をご利用ください。