鈴鹿高丸
アイリとの一瞬の遭遇があった後。
ヴィーダ・ナ・バリドは、山の一族の社、その周辺を探索していた。とは言ってもそれは、探索というより散策に近い。特に当てがあるわけでもなく周囲を見回っているのだから。
小一時間が過ぎた頃。
ここに登ってくるまでに相当の時間が過ぎていた。もうそろそろ降り始めないと夜になってしまうかもしれない。さすがに中に入れてもらえない以上、野宿をする気にもならない。
そう思っていた、そのとき。
「……ちょっとちょっと」
ん?
何か聞こえた気がして、辺りを見回す。
特に、何も姿はない。
「こっちこっち。ってあー……そうか、隠身してたんだった」
どうも気の抜けた声――と思った瞬間。
目の前に、人が現われた。
本当にいきなり何もないところから現われた人影に、思わずヴィーダは尻餅をついてしまう。
現われたのは――女性だった。どう見ても、同じか、年下くらいだろう。端正な顔立ち――単純に、その一言だけで片付けるのは間違っているほど、整った目鼻立ち――整いすぎていて、服の上からでも分かる胸のふくらみがなければ、男女どちらとも言えるほどだった。
内心少し気圧されながらも、すぐに立ち上がる。埃を払う仕草。冷静さを取り戻す。
「なんだ、あんた? どっから現われた?」
問いかけに対し、くすっ、と微笑む。同性から見ても赤くなるほどの表情だった。
「ちょっとね、風の力を使って。周りから見えなくなるようにしてたの。私はね――シャナ。シャナ・ア・クー。『契りの娘』って言ったほうが通りがいいかな?」
にこやかな笑み。
「は? 何言ってるのあんた……」
小馬鹿にしたように言いながらも、ヴィータは否定することができなかった。その容姿。その呪術の力。『契りの娘』でないにしろ、只者ではないことは間違いない。
「信じないのは勝手ですけどね……祭具、探してる人? 言っとくけど、私は祭具隠してなんかないからね」
この目の前の娘が本物かどうかは別として。
ヴィーダは乗ってみることにした。
「こうして外に脱出してるやつに言われても説得力ないな」
冷たく言い放つ。案の定、シャナは乗ってきた。
「確かにこうして祭具がなくなって、ケセラが慌ててるからこそ、こっそり出てこれたんだけど……アイリ辺りの目をごまかすのは簡単だしね。でも、私は生贄になることは、受け入れてるのよ。今もね。外って一度も出たことないから……さすがに一度、見てみたくて」
最後は少しだけ、寂しげに。遠い目が、ヴィーダを射抜いて遠く空を見つめていた。
「ふーん。それでさっきアイリってのが慌てて出て行ったのか……大丈夫なのか? そんなことして」
「そうね……戻らないといけないんだけど、いっそ少し外を見てみたいかな……そうだ。ちょっと力を貸してくれないかな……幸い、私の顔なんて一族の人間しか知らないし……貴方の家にでもかくまってくれてもいいし。ね、ほんの数日だけ……」
無茶な頼みである。それがばれたら、どうなることか。
そのことを話すと、シャナは――数日たてば戻るし、その時にはくれぐれも貴方のことは良くしてもらうように伝える。客分として山の一族に招くよう取り計らってもいい、とまで言った。
どうするべきか――悩みどころだった。
※このリアクションは以下のPCに発行されています。
ヴィーダ・ナ・バリド
※マスターより
現時点で、シャナと接触しているのはヴィーダさんだけとなります。
メインリアクションで『a1-04:儀式・山の一族・契りの娘について調べる。』
を選んだ場合、シャナの誘いに対してどうするかを決めていただくことができます。
誘いに対しての返答がない、もしくは関係のない選択肢を選ばれた場合、誘いに乗らずそのまま山を降りることになります。