川岸満里亜
砂浜は水中に沈み。
島の側面は岩場か森であった。
水に埋もれた木々の間に船を泊め、彼女達は島に降り立った。
住める場所を探し、斜面を登り。
只、広大な海を見ながら、島を巡り。
森の恩恵を受けながら、生を繋ぎ。
そして、森の合間に草原を見つけた。
降り注ぐ光は穏やかで。
彼女達を柔らかく包み込み、迎え入れてくれるようであった。
「ここで暮らそう」
誰かの言葉に、歓声があがり、人々は抱き合い、涙した。
沈んだ大陸……
生き残った彼女達は、この島で新たな人生を歩み始めた。
雨風を防ぐ為に建てられたテントが、木造の家に変わった頃。
夕焼けの色をした葉が舞い踊り。
草花がゆっくりと床に就き。
風が心に沁みる。
冬が、訪れようとしていた。
☆
生活の場として最初に建てられたのは、集合住宅であった。
続いて建てられた周囲の簡素な一軒家に生活力のある家族や友人同士が移り住んで行く。
「では、引き取り手のいない孤児は、皆で面倒を見ることにしましょう」
「あそこを孤児院にするのね」
「いえ、孤児院と呼ぶのはやめましょうよ」
「では……学園にしてはどうだ。そろそろ勉学が必要だろ」
毎日のように会議が開かれ、難民の今後について話し合われている。
まとめ役となる者は未だいない。集まった大人達が皆で意見を出し合い、時には多数決で物事を決定している。
大陸で成人といえば、20歳なのだが、このおよそ100名の難民の中で二十歳を越えているものは、半数以下であり、そのうち、半分が60歳を越える老人であった。
「15歳以上であれば、体力的に大人と変わらんだろ。一般教養も身についているだろうしな」
「じゃあ、14歳以下の孤児は学園の寮で暮らすということで」
「勉強を教えられる人いる?」
「学科は、語学、算術……あとは道徳が必要かしら」
「庶務はどうする? 学園の運営は皆で負担し合うのよね?」
次々に意見が述べられるが、皆述べるだけであり、なかなかこの会議は進展しないのだ。
「まずは、村長が必要じゃないか」
誰かの言葉は、尤もである。
しかし、今までも何度も村長を決めようとしたのだが、適任者がいないのだ。立候補者もいない。
成人男女の比率は、およそ20:1。健康な男性は、大工仕事や狩り、島の探索で会議に出席できる状態ではない。
女性達もまた、子供の世話と家事に追われている。ここには数ヶ月前まで普通に使っていた器具も熱源もないのだ。
一人一人が、自分が生きる為精一杯だった。
「学園と村の運営に必要な物資は皆でどうにかしよう」
「そうね。公務員ということで。税金も決めましょう……」
通貨が作られ、ようやく農業、林業、畜産、商業と、各々が仕事を見つけ出した頃だ。
草原はようやく、村となり始めようとしていた。
「やだっ。ルルナはお姉ちゃんと一緒がいい!!」
ルルナ・ケイジは、目に涙をいっぱい溜めて、抵抗した。
「15歳以上はもうここに住めないのよ……。私の年だと、学園の仕事には就けないから、職員としてもいられないの」
ミコナ・ケイジは、あやすように、妹の髪を撫でながら、屈み込んでルルナの顔を覗き込んだ。
「お兄ちゃんが戻ってくるまでの辛抱だから。そしたら、3人で暮らそうね」
「やだ、やだ、やだ〜〜〜〜っ。お姉ちゃん、行っちゃやだよーーーっ!!!」
ミコナに、しがみついて抵抗するルルナ。
「私だって、ルルナと一緒に暮らしていたいよ。だけど、私にはそれだけの能力がないから……ごめんね、ルルナ……」
何故、もう少し勉強をしておかなかったのだろう。何故、もう少し体力をつけておかなかったのだろう。非力な自分が恨めしい。
「毎日会いにくるから。ね、ルルナ」
大切な妹をぎゅっと抱きしめた。
彼女達は生きている。一緒に暮らせずとも、会うことが出来る。共に笑いあうことも、泣くことも。
「……絶対、絶対毎日来てくれる?」
「うん、絶対だよ」
「お兄ちゃん、もうすぐ帰ってくるよね?」
「……うん、帰ってくるよ。だから、それまでの間、我慢してね。……私も寂しいよ……」
最後の言葉は本心だった。
両親は、もう世界の何処にもいない。
探索に出た兄が行方不明になって、数週間になる。一人で暮らせる力がないため、ミコナは遠い親戚に当たるユズおばさんの家族と同居することが決まっていた。だけれど……。
「私もとっても寂しいよ、ルルナ……」
小さな声は、妹の心を打ち。ルルナがしゃくりをあげる。
「お姉ちゃん……ルルナ、我慢する。我慢するから、お姉ちゃんも、もうちょっとだけ、我慢してね。お兄ちゃんが帰ってくるまで」
ルルナはミコナを抱きしめ返し、その背中を撫でた。
その日の夜から、ルルナは部屋に一人になった。
食事は、決まった時間に食堂で食べることになるらしい。
子供達は、夕方、会議室に集められる。
10歳から14歳が、高等科。
5歳から9歳が、中等科。
それ以下の子供は初等科。と分けられるらしい。
簡単な説明を受けた後、部屋割りを決められる。部屋に余裕がある為、高等科の子供は1人暮らしが認められる。
高等科の生徒は全部で16名。男子6名。女子10名だ。
いつも姉と行動していたせいで、ルルナには同じ年頃の友達がいない。全員の顔は知っているし、喋ったことがある子もいる。しかし……。
「ルルナは、寮で暮らすんだ〜」
ユズおばさんの長女である、このカヨちゃんは苦手であった。
「ルルナも魔法でも使えたら、うちの子にしてあげたのにねー」
「いいの。ルルナはお兄ちゃんが帰ってきたら、お姉ちゃんと3人で暮らすから!」
「えー、ミコナちゃんは、カヨのお姉ちゃんになるんだよ〜。だからもう、ルルナとは暮らさないんだよ」
「えっ? お姉ちゃんは、ルルナのお姉ちゃんだもん!」
向きになって抵抗するルルナ。そこに、皮肉気な男子の声が響く。
「違うんじゃねーの。お前、ねーちゃんとも兄ちゃんとも似てねーじゃん」
そう言ったのは、ルルナより2つ年上の男の子。バリ君だった。
彼とは、何度か顔を合わせたことがある程度だったのだが、その度に睨まれた覚えがある。ルルナには身に覚えがないため、気のせいと思うことにしていたのだけれど……。
「なんでそんな事言うのっ」
涙目でそういうと、バリ君は、「べっつに〜」とにやりと笑いながら、男子の方に戻っていった。
女子達は、友達同士で既にグループが出来ている。カヨちゃんも、いつのまにか、他の女子と楽しそうに話をしている。
同い年の女子はカヨちゃんだけであり、他は皆年上。なんだかとても入り込みづらく、ルルナは一人、ぽつんと立っていた。
数日後、探索に出ていた男女が帰還する。
ミコナとルルナは、兄が共に帰還することを切に願っていたが、そこに兄の姿はなかった。
探索隊の話では、南側の森を進み、細い川を下った先に湖があったという。
そこに、人の姿を見たと、彼らは言った。
大陸に住む者に、存在さえ知られていなかったこの島だが、暮らしている種族がいたというのだ。
喜ばしいことなのか、頭を悩ますことなのか。
報告を受けた難民達の反応は様々だった。
※NPC
●ミコナ・ケイジ(16歳)
性別・女
髪・茶色セミロング
瞳・茶色
体力3 魔力22 信頼8 知識7
何事にも一生懸命。控え目な女の子。
魔法使い。人に教えるほどの技量はない。
●ルルナ・ケイジ(10歳)
性別・女
髪・朱色ロング
瞳・茶色
体力12 魔力12 信頼5 知識11
甘えん坊で、兄と姉が大好き。
●ユズおばさん(女42歳)
ミコナと同居。
●カヨちゃん(女10歳)
ユズおばさんの子供。ミコナが好き。ルルナが嫌い。
●バリくん(男12歳)
※ルール
初回は難民以外、参加できません。
原住民と難民の知人、親戚関係は不可です。
20歳以上の保護者がいない14歳以下のPCは、寮に入ります。
原則PCは一人身(孤児)です。ただし、PC同士の夫婦、親戚、友人関係は構いません。
15歳以上は寮に入れず、自立が必要となるため、なんらかの仕事に就く(始める)ことをお勧めします。体力値20以上で狩りでの自給自足が可能と考えます。
生まれ持った属性の魔法が使えます。属性が火であれば、火を熾したり、消したり。水であれば、水を操ったり、鎮めたり。魔力値により、その規模が決定されます。また、魔力値はあっても、習練をしていなければ使うことは困難です。魔法については、自由設定欄で習練経験の有無をご記入ください(記入なしの場合は習練経験無しといたします)。
魔法使用例【属性水】
魔力0 使えない。才能が全くない。
魔力1〜10 軽く操れる程度。殆ど何もできない。
魔力11〜20 濡れた洗濯物を瞬時に乾かしたり。
魔力21〜30 雨を降らしたり。
魔力31〜40 津波や洪水、豪雨を起こしたり。
RAリスト(及び条件)
・b1-01:村長に立候補(25歳以上。信頼15、知識10以上)
・b1-02:交渉団として原住民と交渉(20歳以上。信頼15以上)
・b1-03:学園の教師になる(20歳以上。知識15以上)
・b1-04:学園の職員になる(18歳以上)
・b1-05:寮に入る(14歳以下)
・b1-06:探索に行く(準備をしていかないと、遭難します)
・b1-07:商売を始める
・b1-08:村造りをする
・b1-09:村民会議に出席(サブアクションで出席、提案可能)
・b1-10:冬に備える
※マスターより
わはは、8PC制限なのに、RAが10もある(笑)。
えーと、こんにちは、川岸です! マスタリングをさせていただくのは久しぶりです。
こちらのシナリオは自由度が高く、個々が様々な立場で様々な事が出来る代わり、自分の役割を見つけないと何をしたらいいのか分らない状況に陥る可能性もあります。
また、村の運営、交渉も全てPC任せになります。担当される方がいなければ無名NPCが進めることになりますが、現在の所、適任者が確認されていない為、良い結果を望めるかどうかは不明です。
サブアクションで会議に出席し、運営に関する提案をすることが出来ます。成人であれば、発言力は増すことでしょう。
基本的にほのぼの系ですが、原住民との交渉が決裂し、悲惨な戦争になる可能性も否めません。
RAについては、メイン行動の番号を選択してください。会議での提案事項や、日常の職業の選択等については、サブアクション欄に書き入れることが可能です。
それでは、一緒に村を担っていきましょ〜。